はじめての構造主義 (講談社現代新書)

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著者 :
makasataさん  未設定  読み終わった 

主にレヴィ=ストロースの定義した「構造」の解説、そしてレヴィ=ストロースが「構造」を発見するために必要となった諸概念と、「構造」を理解するための周辺知識を優しい文体で解説する本。もちろん親族体系と神話の構造分析についても触れている。そして西洋近代主義であるマルクス主義と実存主義をどのように批判し乗り越えていったのか、どうしてそれらを批判することになったのかを示す。フーコーやソシュールの言語学なんかにも触れている。

もっとも、親族体系と神話についてはどちらも扱いは軽く、特に後者は軽くさらうような感じなので、より詳しく具体的な分析手法について知りたければ小田亮の『レヴィ=ストロース入門』(ちくま新書)がオススメです(こちらは読みにくいと思いますが)。

特にこの本が良かったと感じたのは、現代数学で言う「構造」という概念からレヴィ=ストロースが文化人類学の「構造」を発想した、という部分の解説だった。なぜ現代数学的「構造」が親族体系と関係するのか、どのように応用されているのかを丁寧に、数学的な具体例も踏まえて解説している。

他の書籍では、「レヴィ=ストロースは数学から発想を得た。数学の抽象的思考と何か関係があったのかもしれない。」くらいしか説明がありませんが、何か関係があったどころの話ではなく、構造主義の根本的な考え方と密接に関係している、ということが本書から分かる。
数学における抽象概念である「構造」とはまず何であり、それをレヴィ=ストロースがどのように援用したのか、その周辺の話も含めて1章を割いている。
これが個人的には大変わかりやすく、本書を読んでよかったと思える点であった。何故他の論者はこの部分に触れずに構造主義を語ろうとしているのか、全く不思議に思えてくる。

巷では「『構造』という概念は分かりにくく勘違いされる傾向にある」と言いつつ、肝心の「構造」の定義についてはボンヤリとしか語っていない。勘違いされるのはそういう態度のせいではないんでしょうか。数学的な観点の話が抜けていてはそりゃ理解できまい、と思う。

自分はこの本を読んで、「構造」が全くわかりにくい概念であるとも感じなかったし、数学的な背景があるなら(定式化されているはずなので)もっと理解しやすいではないか、と感じた。実際に本書の解説するレヴィ=ストロースの「構造」は、かなり明快に理解することができた(本書の解説は著者独自の理解かもしれない、という批判は別問題として)。

構造主義に関する本はいろいろ読んだけど、結局なんだかわからずモヤモヤするなあ、という人にはオススメです。
最終章である第五章の、構造主義とポスト構造主義周辺の議論の捉えなおしについては、自分にとってはあまり聞いたことがなかった論点なのでとても興味深かったです。


ちなみに、先も述べたように、小田亮の『レヴィ=ストロース入門』(ちくま新書)を読むと、レヴィ=ストロースが「構造」を具体的にどう研究で用いているのかが分かると思います。
他に、内田樹の『寝ながら学べる構造主義』(文春新書)。こちらはどちらかと言うと構造主義を中心としたフランス現代思想に関する解説で、構造主義そのものの解説ではない(と思う)。構造主義が結局何であるのか、その根底にあるアイデアについては解説されていないのでまずわからないとは思うが、上記の本でもあまり詳しくはない周辺の論者(ソシュール、フーコー、バルト、ラカンなど)の考えたことが解説されている。

『はじめての構造主義』→『レヴィ=ストロース入門』→『寝ながら学べる構造主義』の順で読むとすっきりするかもしれない。(自分は真逆の順で読んでしまったので後悔してます…)
1冊目で「構造」の定義と周辺概念を理解して、2冊目で具体的な研究手法を見つつ周辺思想との関連に触れて、3冊目でフランス現代思想全体を見渡す、という感じになると思うので、3冊読めば「結局構造主義って何なの/何だったの」という疑問はそれなりに晴れると思います。

レビュー投稿日
2012年12月18日
読了日
2012年12月18日
本棚登録日
2012年12月18日
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