公開当時は批評家に理解されず、難解だとか言われたらしいけれども、今、見てみると「これのどこがむずかしいのか」という思いしかしない。主人公のマルチェロはローマの最先端を行くシャレ男として名をはせている。だが、実のところ、彼は田舎から出てきた「お上りさん」で、本当のところは自分の今の姿は偽物じゃないかとびくびく思っている。そこのところに現われた友人スタイナーだけは彼のことを肯定的に評価してくれたので、そこに安らぎを覚えるのだが、そのスタイナーも唐突に子どもも巻き添えにして死んでしまう。このショックでマルチェロはまったく生きる方向性を見失って、かつての輝きも失い、今やでくの坊のようである。らんちき騒ぎの果てに明け方、散歩に行った海岸で彼が見たのは腐りかけたエイの死体。まさにそれは彼自身の姿である。絶望しかけた彼に、向こう岸から純粋な少女が呼びかける。その少女のほうに歩き出せば、彼は希望を取り返すかもしれない。しかし、彼はそうはせずに少女から離れて行ってしまう。
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- 感想投稿日 : 2015年7月28日
- 読了日 : 2015年7月28日
- 本棚登録日 : 2015年7月28日
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