座敷童子の近現代版、スキマワラシ。
古い建築物が取り壊される時に現れる。
スキマワラシは、妖怪のようなおどろおどろしいのではない。夏の空と草原をイメージする爽やかさで描かれている。(本書の表紙の絵がとても良い)
近現代の古い建物に住み着くスキマワラシは、妖怪?八百万の神?夏を想わせる麦わら帽子の白いワンピース姿で、カルピスのCMかよ!と思いましたが、顔が分からない怖さがアクセントになっている。なのに写メで撮れてしまうお茶目さ。
主人公は兄と小道具屋を営むサンタというヘンテコな名前でモノから記憶を読み取れる摩訶不思議な能力の持ち主。この能力と人々との繋がりから、自分のあやふやな過去を紐解いていく。
そしてもう一人のキーマン、サンタのお兄さん太郎。彼は、襖に付いてる金具(引手)を磨くのが趣味。ちょっと変わってるけど、自分の中に美を持つ人は、何か魅力的。
物語は、スキマワラシの謎とサンタの過去が解明されることを軸として展開されるが、小噺が沢山盛り込まれていて、なかなかに長い。
でも私が好きなものが沢山出てきて(古い喫茶店とチーズケーキ、温泉(銭湯)、落語、美術祭)、オモチャ箱のようで飽きずに読めました。
一寸法師の小槌の話では、小槌の解釈について論じられる。振ると一寸法師が大きくなるのは、時間の早回しの演出の解釈は面白かった。
サンタのモノの記憶を読み取る能力+スキマワラシの未知の能力?で時間を遡り亡くなった両親と言葉を交わす。そして自分の過去を知り、サンタの意味を知り、自身のアイデンティティを得る。
スキマワラシの集めていた種は、先人の知恵で、それを覇南子に託したのは、戦後日本の強みであったスクラップアンドビルドだけじゃなく、古き良きものを活かしながら進化するリノベーションを実現できる人にスポットライトをあてたと解釈しました。
スキマワラシの響きがなんか良い。
- 感想投稿日 : 2021年1月5日
- 読了日 : 2021年1月5日
- 本棚登録日 : 2021年1月1日
みんなの感想をみる