悪童日記 (ハヤカワ・ノヴェルズ)

  • 早川書房 (1991年1月1日発売)
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「髪に受けた愛撫だけは、捨てることができない。」

二人の子供は何もかも捨ててしまう。はじめは殴られた痛みを感じる体の弱さを。そして優しい言葉を感じる心の弱さを。
訓練された軍人のように何も感じず、冷酷に思考し、行動する。心を表現する言葉も「曖昧なもの」を切り捨て、事実だけを記録し、伝達する手段として使用する。
...戦時下で生きるために。

乞食の訓練で受けた施しを二人は捨ててしまうが、「何も与えるものがないから」といって髪を撫でてもらった「事実」と、それを捨てることはできないという「事実」を記録する。そのことをどう思ったかは記録しない。

どう思ったのだろうか。素直に嬉しかったのか、それとも「心を動かされた」ことを疎ましく感じたのか。何も感じなければ書き残す必要もない一文があることで、読み手の想像力がかきたてられる。

...「感情のない双子」から連想される作品として、Monsterのヨハンとアンナや、ブラックラグーンのヘンゼルとグレーテルがあげられていたが、自分はベルセルクのセルピコ(とファルネーゼ。双子ではないが)が浮かんだ。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2015年4月2日
読了日 : 2015年4月2日
本棚登録日 : 2015年3月30日

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