ソロモンの偽証 第III部 法廷

4.18
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本棚登録 : 4226
レビュー : 709
著者 :
mametarou77さん ミステリー   読み終わった 

読了、ネタバレあり。95点。読むのは非常に疲れますが読んで絶対に損しない小説です!

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学校内裁判がいよいよ始まった。
2-Aの柏木卓也が死亡した事件に対して、元2-A学級委員長の藤野涼子が検事として、
告発された大出俊次を被告人としその被告人を弁護する立場として神原和彦が対峙する。
全ては事件の真相を知る為に。
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遂に完結巻です。
いろいろ語りたい部分がありますがなかなか纏まらなくて読み難い形になっているかもしれませんが。

さて、この小説はここから法廷ミステリとしての色を強めて行きますが、一方でこの裁判があくまでも
学校で有志が行いその結果に何ら法的拘束力を持たない疑似裁判であることが逆に日本を舞台にした法廷ミステリとして上手く機能しているように感じました。
それを特に強く感じたのは、大出たちが他の中学の学生に対して暴行恐喝を行った件で、最初に検事側が証拠として提出しようとした際にその証拠の採用を認めず、
翌日弁護側が別の証人の供述に際してその暴行恐喝事件を証拠として提出した手際、これが実際の日本の裁判で行われるようなやり取りかは判りかねますが、
このようなやり取りが現実の裁判を扱った小説中に描かれていたら多少疑問を感じたかもしれません、がこの小説で行われているのが、語弊がある言い方をすれば裁判ごっこである為にそれが単純に弁護側の上手さに繋がりつつ不自然さがなかったことに繋がっているのと感じました。
もちろんここまで上手く展開を作ってきた著者の筆力が前提としてあり、同じ手法を用いても筆力が無ければそれこそ単なる"裁判ごっこ"になってしまうとは思いますが。

また作中では著者の教育観の一部を伺わせるシーンも一部にあり、引用で挙げていますがこの点に関しては非常に強く感心させられました。
言われてみればその通りだと思う反面自らそう考えたことがなかったので、この点でもさすが、と言いたくなる部分です。

この長い長い物語の締め括り方としてのこの裁判の決着は非常に良かったと思います。
そもそも一連の事件を通して誰も彼もが傷付いており時間と共に解決するという大人のスタンスに対して、
子供たちがそれを否定しとことん傷を曝け出しながらその傷と向き合って癒すという、中学生でなければ成り立たない物語で
特定の誰かが傷つけられたまま終わるのではなく、その差はありながらも全員に癒しがあったことはこの本を人に薦める際に安心出来るポイントですし、後味も綺麗だったと思います。
さらにこの点で著者の構成力の凄さを感じさせられたのは弁護助手を勤めたのが野田健一であり、彼が第Ⅰ部である事件を起こそうとしたことが
最終日のあるシーンの布石になっていることです。

もし機会があれば、この部分を最初から考えて書き出したのか、それとも話を進める途中で自然とそうなったのか伺ってみたいと思いました。


やや気になった点を挙げると、裁判における検事側or弁護側というのはあくまで役割であって、それも本来の目的である真実を解明する為のツールに過ぎない筈なのに、
その役割に拘り過ぎていて、異議あり、と目的にそぐわない場面で強勢に唱えてるシーンが極稀にあったことです。
そのようなシーンは基本的に涼子の側に多く、中学生なのに大人以上に大人に描かれてる彼女の人物像からするとやや不自然な印象が残ってしまいました。


+++++
追記
他の方のレビューに目を通しながら思ったこと、また小説を読みながら思っていたことを思い出したので少し綴ってみます。

第Ⅰ部を読みながら思っていたことは、人間は他の人に影響を与えながら、与えられながら生きているし生きていかなきゃならないのに、それに無自覚の人間が多く感じられて、それは自分のことも含め非常に反省させられたこと。
万が一何かが起こった時、そんなことが起こるなんて思わなかった、とか言う人間にはなりたくないという気持ち。
でもそういう気持ちを強く持ち過ぎると人と交わるのが怖くなってしまうジレンマ。その狭間で自分の納得出来る距離感をもって生活していくしかないんだなということ。


レビューを読んだ上で非常に気になったのは、"ソロモンの偽証"と言うタイトル。
ソロモンは一般に賢王であるらしく、そうなるとこのソロモンは誰なのか、偽証とは何を指し示したのかということを強く考えさせられました。
この作品で行動や思考で最もソロモンと喩えられるに相応しいのは神原少年であり、彼がソロモンなら偽証は柏木少年の死の真相をずっと黙していたことを指すのでしょうか?
それとも最後の最後に自分の業を吐露した神原少年を救う為に偽証を通した三宅樹理を指すのでしょうか?
個人的には樹理であって欲しいと、あくまで感情論ですがそう思っています。

レビュー投稿日
2013年2月3日
読了日
2013年2月3日
本棚登録日
2013年2月3日
3
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