処刑までの十章

著者 :
  • 光文社 (2014年10月9日発売)
2.84
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本棚登録 : 161
感想 : 30
2

40点

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五時七十一分の言葉が示すものとは?
ある日東京で普通のサラリーマンが突然失踪する。その直前に遠く高知では火災現場から身元不明の死体が発見され事件を予告した葉書には五時七十一分という奇妙な時間が。
サラリーマンの妻と弟は彼の失踪と高知の事件を結び付けて調べて行くが……
***

ざっくりと言えば物語の推進力が不足している小説でした。奇妙な時刻自体は比較的魅力的な謎だと感じますが如何せん小説の大半が弟と妻の、兄の失踪で変化した二人の関係性のやり取りばかり。
事件の調査が恐ろしく遅く、極端に言えば、義姉と弟が不倫しようがどうでもいいと言うスタンスで見てしまうと延々と非生産的なやり取りを読まされる小説になっています。
高知へ行き、あるいは奈良へ行き新しい事実が判明したと思ったら、その事実から義姉との関係に対しての内面描写や義姉とのやり取りが続き、結局その事実から事件の真相を精査することなく次の調査で新たな事実がわかる、そんな繰り返しという印象です。
この判明した事実というのも確たるものは非常に少なく、受け取りようによってはどうとでも取れるものが多い。
Aという出来事の真相がa1,a2,a3の3通り、Bという出来事の真相がb1,b2,b3の、Cがまた3通りのような形で語られ、
通常の本格推理であれば確固たる事実に一致する組み合わせが一つに決まりそれが真相であるという論法を見ますが、この小説の場合語り部の主観でAの真相はa2だからBはb1だ、とそう言う形で進み、次の証言が得られればそれまでの主観が揺らいでa1-b3の組み合わせだ、とこれはあくまでも僕のイメージですが、事件に対する真相へ進んでいないと受け取れました。

450ページを超えた当たりでようやく事件が纏まりだしますがそれまでがとにかく冗長で、加えて最後のオチも今一つ納得できないのも評価を押し下げてしまいました。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: ミステリー
感想投稿日 : 2016年11月2日
読了日 : 2016年11月2日
本棚登録日 : 2016年11月2日

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