キング牧師のことは聞いたことがあるけれど、セルマの行進のことも血の日曜日のことも全く知りませんでした。
まだなお色濃く残る人種差別に非暴力で立ち向かうことがどれほど辛いことなのかどれほど不可能に近いことなのかこの作品を見ると思う。
許せない、許せない、許せない。物語中盤からあまりにも無抵抗な黒人たちに対しての理不尽すぎる白人の警官による暴力に震えが止まらない。
これは映画ではあるけれど、たった50年前に起こっていた事実である。
目を背けたくなる、決して許されない悪意が充満しているけれど、知らなければいけない。
黒人たちは闘いたいわけではない。みとめてもらいたいだけだ。
選挙用紙に候補者の名前を書くという権利を。
バスに座るという権利や普通に学校に行くといえ権利を得るために血を流した先人たちのように。
黒人たちの強さは、奴隷時代から様々な拷問や暴力にも耐え、それでもプライドを高く持ち続けたという高貴な血でが流れているという自信があるからだろう。
そして。この映画は黒人に道を開きノーベル平和賞までも授与された黒人の歴史的なヒーローであるキング牧師も家族や夫婦の関係に揺れるただの人間だったこともしっかりと描いている。
戦うキング牧師の妻の恐ろしい毎日は計り知れない。
私も、たとえ主人が英雄と祭り上げられても、ノーベル平和賞を、とっても命の危険に日々晒され、嫌がらせを受けるくらいなら英雄にならないでほしいと思ってしまうだろう。
そんな風にこの作品には、白人が悪とか黒人があまりに不憫だとか。そういうことではなく、このキング牧師率いた行進と演説の裏に各個人のドラマが、あったということ。KKKの報復覚悟もで共に行進をした白人も大勢いたということ。
沢山の史実が詰まって人間関係も複雑に絡み合って一見飲み込みづらいようにもみえるけれど、魂のこもった言葉や、エネルギーに圧倒されて、後半は涙が止まらなかった。もちろん私のように未知識でも大丈夫だけど、先に少し知識をいれておくともっといいかもです。
- 感想投稿日 : 2016年12月11日
- 読了日 : 2016年12月11日
- 本棚登録日 : 2016年12月11日
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