50年代の街並みの美しい映像と、バランスよく考えられた衣装の配色の秀逸さだけでも一見の価値があるおしゃれさなのに、内容もテンポ良く、台詞も全てが粋で、観た後もじんわり静かに胸を打つ秀作でした。
故郷とは生まれ育ったところとは限らない。
自分のための人生が歩めた所、そして初めて自分らしく居られる場所こそ本当の故郷なのだと改めて思う。
最初、とても自信なさげで、言いたいことも言えず内向的だったエイリッシュが恋を知って、だんだんと自信を持ってきらきらと魅力的なニューヨーカーになっていく様子がトントン拍子に描かれていたので、後半に起こった予想外の展開がズシンと響く。
最愛の姉ローズとエイリッシュの文通は清らかで、でもそこにはきっと微かな嘘があったのだろう。
故郷に縛られるローズはどこかで自分の不遇を嘆きながらもエイリッシュに彼女の叶えられなかった人生を託していたのかもしれないと思うととても切ない。
運命は本当に意地悪で、目の前に何もない時もあるのに、いきなり選択肢をいくつも突きつけて試してくるものだ。
自分がもし、エイリッシュの立場だったらどうしてたのだろうと悩んでしまう。
もしも自分の中での答えは決まっていたっても、周りの環境が本当の自分を解放させることを許さないこともある。
この場合は、彼女にとっての完全悪、魔女のケリーがある意味一役買ってくれたわけで、どんな人にもある意味人の人生を動かす役割があるんだなぁと思ってしまった。
つぐないや、ラブリーボーンの時のあの美少女シァーシャ ローナンが大人の女性になっていたことに時の流れの早さを感じつつ、未だあの透き通る瞳に純朴さが残っていて、エイリッシュのキャラクターをより愛おしい存在にしてくれていました。
パッケージにもなっているレンガ壁に寄りかかっているエイリッシュの画は色合いがとても綺麗でおしゃれだなと思っていたけど、とても意味があるシーンたったのね。
本当に早く観れば良かったと悔やんだ作品でした。
- 感想投稿日 : 2017年10月30日
- 読了日 : 2017年10月30日
- 本棚登録日 : 2017年10月30日
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