はかせのはなし

3.15
  • (1)
  • (4)
  • (5)
  • (2)
  • (1)
本棚登録 : 68
レビュー : 10
著者 :
manaviewさん  未設定  読み終わった 

文章とは誰かに向けた手紙でありタイムカプセルである。つまりは想いという目には見えないものを告白して形にすることだ。
著者が向けた人に届けば、過去と現在と未来が同時に存在することにもなるだろう。向けていない人だとしても、そこには自分とは違う感性や人生を持った他者のことを知れる。同時に他人の感情と触れ合うと自分の感情について考えることにもなる。

書籍という形だったとしても、ネットという広大な記録の海の中に浮かんでいても、書かれた「文」は偶然なのか必然なのかいつか届いてしまう。
届いた先の読み手にとってそれがどんなものになるのかわからない。
ただ、どんなに長くても百年程度しか生きられない僕たちが、その時感じた想いや出来事を記すことはどうしても抗えない時間という概念を受け入れることでもあり、何かを託したいというロマンチックな気持ちでもある。

どんなに時間が流れて、この肉体が滅んでも書かれた言葉が残されて、まったく知らない誰かに届いたりするかもしれない。
想いの結晶化、あるいは生きてきた時間を刻むようなもの。

最後に著者である博士さんが恥ずかしそうに娘さんへの想いをあとがきで書いている。
父から娘への手紙。それは想いのタイムカプセルになって、いつか開かれて過去の父と再会することになるはずだ。そして、たった一人の人に向けられた言葉は、他者を拒まずに届くものであるはずだと思う。
強い想いだけが圧倒的な時間という概念に抗う一つの方法になる。

レビュー投稿日
2016年11月27日
読了日
2016年11月27日
本棚登録日
2016年11月17日
0
ツイートする
このエントリーをはてなブックマークに追加

『はかせのはなし』のレビューをもっとみる

ツイートする