プラネタリウムの外側 (ハヤカワ文庫JA)

著者 :
  • 早川書房 (2018年3月20日発売)
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『未必のマクベス』のような長編ではなく、短編集だが早瀬さんは「記憶」と「記録」について書かれている。それには「肉体」という実存があり、いつか朽ちても「記憶」は残された側に残るか、あるいは知らぬうちに書き換えてしまうかもしれないものだし、正しいと思われている「記録」も改竄されるし消去されるかもしれない。現在は過去という地層で成り立っていて、僕らはその地層を脳内での記憶やなにかに記録したもので、あったものだと思うことで地に足をつけている。それらに付随した想いでさえもかつてはあったのだと信じているし、それがなければ生きていけない。すべてがやがて「無」になってしまう、それでも生きていくこと、失われていくことに対して、誰かへの想いだけは確かにあったことだけが微笑んでるみたいに。つい最近、二日ほど別々の知り合いが夢に出てきたので、最後の『夢で会う人々の領分』の「不在」という言葉に強く頷いた。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2018年3月27日
読了日 : 2018年3月27日
本棚登録日 : 2018年3月20日

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