バナナと日本人: フィリピン農園と食卓のあいだ (岩波新書 黄版 199)

著者 :
  • 岩波書店 (1982年8月20日発売)
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著者:鶴見良行(1926-1994)人類学者。 
内容:プランテーションを経済学的に分析する。

バナナ生産と現地農家と流通販路を多国籍企業がどのように支配しているかを、著者の行なった現地での調査や各種の資料をもとに実証的に示している。また、安直なグローバル化・資本主義批判にも走っておらず、いたって冷静な本。

・『鶴見良行著作集』もある。
・鶴見俊輔は著者のいとこらしい。

【書誌情報】
著書:鶴見良行
通し番号:黄版 199
刊行日:1982/08/20
ISBN:9784004201991
版型:新書 並製 カバー
頁数:238
https://www.iwanami.co.jp/smp/book/b267630.html

【簡易目次】
目次 [i-iii]
地図 [iv-v]

1 バナナはどこから?――知られざる日・米・比の構図 001
2 植民地ミンダナオで――土地を奪った者、奪われた者 027
3 ダバオ麻農園の姿――経営・労働・技術 057
4 バナナ農園の出発――多国籍企業進出の陰に 085
5 多国籍企業の戦略は?――フィリピン資本との結びつき方 109
6 契約農家の「見えざる鎖」――ふくらみ続ける借金 135
7 農園で働く人びと――フェンスの内側を見る 165
8 日本へ、そして食卓へ――流通ルートに何が起ったか 193
9 つくる人びとを思いながら――平等なつながりのために 215

あとがき(一九八二年六月 鶴見良行) [227-230]



バナナ Musa paradisiaca
アバカ麻 Musa textirio
【目次】
目次 [i-iii]
地図 [iv-v]


1 バナナはどこから?――知られざる日・米・比の構図 001
  日露戦争の前年、台湾から
  「これだけまけても買わねぇか」
  台湾産からフィリピン産へ
  植物としてのバナナ
  刈り取られたバナナは…
  人類最初の農業?
  自らは食べない作物を栽培
  なぜミンダナオか――四つの理由
  麻からバナナへ――古川義三の予言
  対日進出が始まるまで
  一人ひとりの問題としての〈東南アジア〉


2 植民地ミンダナオで――土地を奪った者、奪われた者 027
  少数民族、ムスリム、クリスチャン
  ブキッドノン州に開かれた牧場
  デルモンテのパイナップル農園
  ダバオ日本人社会の始まり
  バゴボ族らの住んでいた土地を…
  頻発した米人、邦人の殺害
  日本の資金と人間がどっと流入
  帝国主義の影の下で
  領事館・日本人会による自治
  法網をくぐって農園拡大
  土地論争に欠落するもの


3 ダバオ麻農園の姿――経営・労働・技術 057
  「自営者」に委託する方式
  麻という植物
  自営者の暮しと労働
  「動力ハゴタン」による生産力向上
  軍艦のロープに、和紙や小間物に
  麻農園のフィリピン人と日本人
  経営と生産技術
  サトウキビ農園のパキアオ制度
  防波堤としての流刑地ダペコ
  急増した北方からの開拓農民
  日本軍占領とゲリラの抵抗
  戦後、ダバオ麻農園は…


4 バナナ農園の出発――多国籍企業進出の陰に 085
  ダバオ市の東北方に
  一九六二年――神保信彦の報告
  日比友好通商航海条約が凍結されて
  ユナイテッド・ブランズ社とドール社の暗躍
  民族派議員による暴露
  ドール社のパイナップル農園づくり
  「ミンダナオ全島を貸与する気か」
  バナナを低コストで
  四つの生産単位
  賃貸契約と経営契約
  箱詰め・輸送コストを抑えるために


5 多国籍企業の戦略は?――フィリピン資本との結びつき方 109
  タデコ農園と結んだユナイテッド・ブランズ社
  大地主フロイレンドの横顔
  デルモンテ社と地場農園九社の契約
  価格移転、融資制度
  地場農園の命運――この一〇年
  大財閥と手を組んだドール社
  国際資本と地場資本が分かちがたく統合
  南コタバト州へも進出
  住友商事とダバオ・フルーツ
  遅きに失した政策発表
  一九七九年の割当て地拡大指令


6 契約農家の「見えざる鎖」――ふくらみ続ける借金 135
  入植者たち
  現金収入も魅力的だったが…
  農家の借金はふくらむ一方
  市場原理が働かず
  借金の原因は生産性の低さに?
  廃棄率と買上げ価格
  借金という「見えざる鎖」
  月収の九六%を引かれて
  抗議か節約か
  埠頭わきスラムの住人たち
  コーヒーも外資に押さえられて
  人びとの食事は…
  買う自由、買わされることの残酷さ
  ペディキュア紅を塗る少女たち


7 農園で働く人びと――フェンスの内側を見る 165
  輸出は豊かさをもたらしたか
  外からもちこまれた経済
  耕作面積の半分は輸出作物
  農園労働者の賃金
  不安定な収入と身分
  農園で、作業場で、港湾で
  受刑者の労働条件
  農園のなかに入る
  こまかく分かれている仕事
  自然のリズムが奪われて
  農薬が空中散布されて
  ざまざまな農薬
  第三世界への有毒殺虫剤輸出は急増
  私たちが安全であればよいのか
  フェンスの内側と外側
  さまざまな武装集団


8 日本へ、そして食卓へ――流通ルートに何が起ったか 193
  輸入元から小売業者まで
  「青もの」をむろで熟成させる
  買い手が強気の契約
  輸入価格を下回る浜値
  生産は増えたが消費は減る
  港から港までを国際資本が支配して
  輸入問屋集団は解散
  米系三社が激しく食い込むなかで
  フィリピン・バナナの一九七〇年代


9 つくる人びとを思いながら――平等なつながりのために 215
  バナナの多様な利用法
  安くて栄養価が高ければよいのか
  生産地ダバオ――麻からバナナへ
  国際資本の支配が拡大して
  生産者に思いをはせよ


あとがき(一九八二年六月 鶴見良行) [227-230]

読書状況:未設定 公開設定:公開
カテゴリ: 610.農業
感想投稿日 : 2014年11月22日
本棚登録日 : 2013年9月2日

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