「暮らしの手帖」でその影絵を見て楽しんでいた幼い頃から、私は藤城清治氏の影絵の大ファンだった。幻想的で、優しくて、どこか哀しくて、見ていると音楽が流れてくるようにその世界の音が聞こえてくるような錯覚さえ受ける。物語の挿絵だけの存在ではなく…彼の「影絵」はたった一枚の中で人間、動物、妖精、自然のさまざまな表情を深く静かに映し出す。一枚の影絵そのものが言葉を使わない詩なのだと思う。この本のタイトル通り、藤城氏の影絵はまさに「光と影の詩人」なのだ。この本にはそんな藤城氏の傑作選、初期の白黒の作品、手がけたCMやデッサン、影絵劇などが掲載されていてご自身による解説や、実際に藤城氏が影絵を制作中のレポートなどもありあの素晴らしい影絵が作られる工程を知ることもできる。見る者すべての感情を揺り動かさずにはいられない珠玉の作品群を楽しめる、まるで宝箱のような本だ。
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- 感想投稿日 : 2009年3月12日
- 読了日 : 2009年3月12日
- 本棚登録日 : 2009年3月12日
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