偶然とは何か?
ということを北欧神話や文学作品、現実の様々な現象と現代数学を結びつけながら解説する本。カバーする領域は、賭け、量子力学、神の存在証明、不完全性定理、カオス理論、フラクタル、天体の運行の3体問題、金融リスク、経済学での合理的期待とケインズ的な美人投票などなど。
という領域は、実は、私はいずれもすごく関心のあるところで、関連する本もいろいろ読んだ。が、ここまで、自分の関心事とぴったりフィットしたものも珍しいと思う。説明もおおむね分かりやすい。
これを読んで、全く知らなかったことが書いてある訳ではないのだが、この本の素晴らしいところは、哲学的、文学的な味わいの深さだ。
われわれの世界は、偶然性の戯れでできている不条理なものなのか、それとも一切は初期状態から決定されるものなのか。いずれにせよ、突き詰めて考えるとなんだか憂鬱な気分になるテーマである。訳者があとがきで書いているように、そうした哲学的な憂い、メランコリーがそこはかとなく漂うところがこの本の最大の魅力だ。
それにしても、現代数学や現代物理学の研究者による入門書は結構読むのだが、外国の人の書いた物には、ほんとうに文学的、哲学的素養の深いもの、ユーモアに満ちたものが多いですね。もちろん、日本人の書いたものも分かりやすくて面白いものは沢山あるのだが、いろいろなトピックをアクロバティックに絡ませながら、話を進めて行く能力は感嘆するものが多い。
要するに教養のレベルの違いということ?
理数系は苦手なのだが、こういう人たちの授業なら、まさに受講したいと思う。
- 感想投稿日 : 2017年5月2日
- 読了日 : 2009年8月26日
- 本棚登録日 : 2017年5月2日
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