わたしの非暴力〈1〉 (みすずライブラリー)

  • みすず書房 (1997年9月19日発売)
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感想 : 4
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これも長い間、積ん読状態にあった本ですね。

1920〜1948年に新聞などにかかれた政治的な文章の2巻のアンソロジーです。

これは、その1巻目で1920〜1940年の分です。

ガンジーの思想はいろいろな本で読めるのだけど、現実の世界に対してどう考えていたのか、具体的にどういう行動をとっていたのか、がよく分かりますね。

ここで一貫して語られていることは、非暴力は、臆病者が反撃できない、死ぬのが怖いので行うものでなく、パワフルで、勇敢なものであるということ。臆病者の非暴力よりは、不条理な暴力に対して、力を使って真実のために戦うほうがよい。だが、本当の非暴力は、そういう戦いよりももっとパワフルなものである、ということ。

もうそれしか書いていないといってもいいくらい。

じゃあ、そのパワフルな非暴力って、どういう感じかというと、敵に対して、わたしはあなたの暴力には屈しませんよ、あなたの決めたルールはわたしは従いません、わたしを殺したいなら、どうぞ殺しなさい、と胸をはだける、みたいな感じですね。

これを口でいうだけでなくて、本当にインドの独立に向けての戦いで実行しているんですね。イギリス軍が、「その線から入るな」とか言っても、無視して、怖れもなく自然に線を超える。イギリス軍が発砲をして、第1列が撃たれる。が、なにもないかのように第2列目が軽々と線を超えて進み出る。イギリス軍は発砲を続ける。が、また3列目がと続き、イギリス軍のほうが、怖くなって、逃げ出す。みたいな戦いなんですね。非暴力・不服従って。人間の良心に対して、体をはって、訴えかけることで、暴力を終息させるんですね。

こんなことが歴史上にあったんだとただただ驚愕です。

そう、時代は、第1次大戦後から、第2次大戦、ヒットラーがヨーロッパで戦争を始めているときに、非暴力を貫くのって、ほんとすごいです。

精神世界の話しではなくて、リアルな戦争、暴力のなかで、非暴力を政治として実践すること。やっぱ、ガンジーって、スゴすぎるです。

そういえば、個人的には、「非暴力」、「暴力がない」というのは、暴力の対概念なので、どうしてもう少しポジティブな表現をしなかったのかなと思っていたのですが、これに対する明確なお答えもありました。あの世では、暴力も非暴力も存在しない一なる世界である。だが、この世においては、暴力があるので、非暴力が存在する。ので、二項対立的に捉えるしかない。だから、この世では非暴力なんだそうだ。

この答えは、すごく腑に落ちました。

ちなみに、ガンジーの自伝は、1920年で終わっていて、政治的な活動が増えるまえで終わっている。ガンジーにとって大切なのは、真実を生きる、人生のなかで実践するということで、政治活動的なのは、その精神がただ形として現われているだけなので、自伝として書くほどのことでもない、ということなんでしょうね。で、この「わたしの非暴力」は、まさに1920年から始まっているので、ガンジーの自伝の続きとしても読むことができます。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2017年4月30日
読了日 : 2015年12月20日
本棚登録日 : 2017年4月30日

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