何者

3.86
  • (803)
  • (1357)
  • (736)
  • (173)
  • (48)
本棚登録 : 7968
レビュー : 1442
著者 :
マリモさん 青春 学生時代   読み終わった 

就活の情報交換をきっかけに集まった5人の大学生。
演劇をやっていたけれど今は辞めている拓人、
大学時代はバンド活動に没頭していた拓人の同居人の光太郎、
留学帰り、熱心に就活の情報を集めている、光太郎の元彼女の瑞月、
同じく留学帰り、大学時代はボランティアや国際活動に充実していた理香、
理香の彼氏でナンチャッテ芸術家、就活を馬鹿にしている隆良。
Twitterで近況を報告し、時々会って情報交換をしあう5人だが、思惑はそれぞれで…。

5人5様でありながら、どの人についても「いるなぁ」「わかるなぁ」と、
見覚えやら身に覚えやらあって、生々しく、痛々しい。

私は自分の就活を終えてもうそれなりに時間が経っているし、
やや特殊な状況でこの本のような就活戦線ともだいぶ違ったけれど、
就活を始めようとしたときに感じたことで、よく覚えていることがある。
「あぁ、私って特に何もしてこなかったし薄っぺらいなぁ、書くことがない…」

とりたてて何もない自分をどうやって取り繕えばいいのやらと頭を悩ませたものだ。
拓人の「ダウト」になぞらえた就活は、何かすごくわかる気がした。
人事をしている知人曰く、就活生の精一杯の虚勢なんて、簡単にわかってしまうらしい。
実際、社会に出たことなく、緩い大学生活を送ってきた大半の大学生にとって、
本当に語れることなんてごくわずかなのだ。
それでも「ダウト」と言われるまで、虚実ない混ぜのカードを並べていくしかない。
自分は自分でしかないと気付きながら、自分の中のネガティブな面を押し殺し、
表向き明るくポジティブな面を強調していくことに、時折感じてしまう虚しさ。
自分を摩耗するのと同時に裏ではドロドロした思いもたまっていって、
どこかで吐き出さずにはいられない。
それが、今はTwitterというツールになるんだなぁ。

内定を得た瑞月が放つ鋭い一言。
“あなたが歩んでいる過程なんて誰も理解してくれないし、重んじてない、誰も追ってないんだよ、もう。”

そして、この作品のテーマにもつながる、
“自分は自分にしかなれない。痛くてカッコ悪い今の自分を、理想の自分に近づけることしかできない。”
という言葉。

実際に就活をしてきた朝井さんだからこそ書けたリアルな現場、
だけど、学生のときの気持ちが色々蘇り、ちょっと苦い一冊でありました。

レビュー投稿日
2013年6月30日
読了日
2013年6月30日
本棚登録日
2013年6月17日
13
ツイートする
このエントリーをはてなブックマークに追加

『何者』のレビューをもっとみる

『何者』のレビューへのコメント

HNGSKさん (2013年6月30日)

マリモさん、こんにちは。
就活をしていた時の自分を思い出してしまいますよね。この作品。
ああ、私は、何て、ちっぽけなんだ。無力なんだって。
今の自分は、痛くてカッコ悪いんだと認めるのは、あの当時はかなり勇気のいることだよなあと、しみじみ感じました。
ぐさぐさ刺さってくる作品ですよねー。

マリモさん (2013年7月1日)

ayakoo80000さんこんにちは(o^^o)

思い出しちゃいますよねー!
自分のだめなとこわかって落ち込むのに、友達の前では虚勢張ってしまったり。
うまくいったつもりで落とされて、何が悪かったんだろうと凹んだり。
社会人やってると忘れてしまう、あの頃をぎゅっと凝縮してありましたね。
Twitterなんかも絡めてさらっと書いてあるのに、なかなか重たかったです。

コメントをする場合は、ログインしてください。

『何者』にマリモさんがつけたタグ

いいね!してくれた人

ツイートする