告白 (双葉文庫) (双葉文庫 み 21-1)

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本棚登録 : 33697
レビュー : 4136
著者 :
マリモさん ミステリー   読み終わった 

4歳の娘を持つシングルマザーである中学1年生の担任だった森口教諭。
ふわふわしたものが大好きな、愛らしい娘は、学校のプールで遺体となって発見される。
この事件は、娘が誤ってプールに落ちた事故として処理される。
担任は学校を去る日、クラスの生徒たちに向かって告白を始める。
娘はクラスの生徒に殺されたのだという恐るべき事件の真相、そして――。

寝る前にちょっとだけと読み出し、衝撃のラストまで、ぐいぐい読んでしまった。本屋大賞はダテじゃない!
語り手は担任から、クラスメイト、犯人の少年の母、犯人の少年へと移る。
身勝手で自己愛に満ちていて、虚栄心にあふれていて、被害意識が強くて…
私も持っている人間の汚い部分、弱い部分をこれでもかと突きつけられてくる。

この国では、少年に大切なわが子を殺されること以上に、被害者が置き去りにされ理不尽を感じるものはないのではないか。
自分の死を強烈に意識する立場に置かれ、または自分の大切な人を奪われて初めて、自分の犯した罪の大きさ、自分の奪った命の重さを知る。
それは真だと思う。
感情を押し殺した告白の中、時々にじみ出る愛娘への深い愛情、愛娘を失った悲しみ、愛娘を奪った生徒に対する憎しみ、理不尽さに対する憤り…。
こんなたくさんの感情を、森口先生は一人で抱えているのだ。どんなに重くつらいことだろうか。
ただ守るべき無垢な我が子を無惨にも殺され、裁きを受けさせることもできない。森口先生の気持ちを思うと、復讐は当然の感情で、責められるべきは少年たちだと思う。

一方で、本当にこれでいいのかなという気持ちが残ったのも確か。
この本でも出てくるK市の中学生の少年が起こした連続殺人事件。
犯人の少年と同世代の私は当時、中学生で善悪の分別がつかないはずがない、少年院なんてなんて生ぬるいのだろう、社会に復帰したらまた同じことを繰り返すだろうと思っていた。
でも、時が流れ彼が約7年後に社会に復帰したと聞いたとき、中学生からの7年は「長かったな」と感じ、少年の1年は、大人の1年とは違うということを実感した。少年の更生もあり得るんじゃないかという気持ちすら生まれた。
桜宮先生のように、少年の更生を信じて赦す、なんてきれいごとより、この「誰も救いにならない」けれど「少年に相応の報いを与えた」ラストの方が多くの人に受け入れられるだろう。でも、実際の社会では、少年の可能性を信じ見守る存在も確かに必要なのだ。
そして、森口先生の復讐で、少なからず少年たちの周りの人は被害を受け、関係ない人も巻き込んでいること。憎しみが憎しみを生む負の連鎖…。
ラストに「そうきたか・・・!」と思いつつも、読後、ダークなイメージだけが残ってしまったのはそのせいか。

最後に、容赦ない森口先生語録。冷たい瞳で見据えられながら言われたら凍ること間違いない。

“三年生の担任を持つと、受験を前にして、「この子はやればできるんです」と保護者の方からよく言われるのですが、この子、の大半はこの分岐点(=ある程度伸びて頭打ちになったところ)で下降線をたどることになった人たちです。「やればできる」のではなく、「やることができない」のです。”

“馬鹿ですか?ラブレターの中には、散々、馬鹿という言葉が使われていました。あなたはいったい自分を何様だと思っているのでしょう。あなたがいったい何を生み出し、あなたが馬鹿と言いながら見下す人たちに、何の恩恵を与えているというのですか?”

レビュー投稿日
2012年12月21日
読了日
2012年12月21日
本棚登録日
2012年12月21日
7
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『告白 (双葉文庫) (双葉文庫 み 21-1)』のレビューへのコメント

猫丸(nyancomaru)さん (2013年1月8日)

「被害者が置き去りに」
少しズレますが、冤罪が晴れた時、遺族の方々の気持ちがどうなっているのだろうか?複雑極まりないだろうな。と思うと、杜撰な捜査をした警察に新たな怒りを覚えます。。。
少々ハードだと聞いて全く読んだコトが無い湊かなえ。「告白」「贖罪」どちらから読もうか迷っていますが、どちらにせよ先ずDVD借りて観るつもり、、、
「少年の更生を信じ」たい派なので、綺麗事と言われないようにしなきゃ。。。
熱心な読者ではありませんが、メルマガ月刊「少年問題」読んでます。
http://www.rikkyo.ne.jp/univ/araki/jvnet-hp/

マリモさん (2013年1月9日)

nyankcomaruさんこんにちは。

最近も無罪となった事件はありましたね。
被害者遺族としては、大事な人を失うだけでなく何度となく振り回され、やりきれない気持ちだろうなといたたまれないです。

私も映画を見てみたいなぁと思っているところです。松たか子さんの演技が話題になりましたよね。
文庫本には、監督のインタビューがあったのですが、生徒役の子役たちも原作を読み、たくさんの討論を経て作り上げたもののようです。
「告白」と「贖罪」だと、デビュー作の告白の方がよく練られていた印象です。いずれも独白体の小説ですので、続けて読むと食傷気味になるかも?でもどちらも考えさせられますので、お時間のあるときにぜひどうぞ。

猫丸(nyancomaru)さん (2013年1月11日)

「たくさんの討論を経て作り上げた」
子ども達には良い経験になったでしょうね。。。

マリモさん (2013年1月15日)

そうですね。ひとつのクラス内でのお話なので、きっと自分に照らし合わせるところが多かったのではないかと。
私が中学生のときに読んだら、また今とは違う感想を持ったんだろうなぁとも思います。

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