アルタイの片隅で

  • インターブックス (2021年10月5日発売)
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本棚登録 : 52
感想 : 8
4

地球っこさんのレビューから。自分では出会えなかった本だと思いました。ご紹介ありがとうございます。

アルタイってどこだろう?
まずはそこからで、素朴な中国の地方を描いた作品で思い出したのが、チャン・ツィイーの主演作である『初恋のきた道』の厳しい自然の情景だったのだけど、彼女は遊牧民ではないし、場所も全然違っていた。
舞台となる新疆ウイグル地方北部のアルタイ地方は、カザフ族が人口の半分を占め、宗教や言葉の違う人たちが暮らす。
作者の李娟は、母(と妹?と祖母?…登場人物も流動的)と一緒に、アルタイの遊牧地域で、半流動的な雑貨店兼裁縫店を開く。
この本では1998年から2003年、政府の定住政策が進む中、伝統的な遊牧生活を送る羊の群れを追う遊牧民にあわせて店を移動させ、カザフ族の冬の定住地区、ゴビ砂漠のウルングル川一帯に定住する頃までの日々の暮らし、そこで暮らす人々のことが綴られている。
地図をつけなかったのは、意図的なのだろう。冬は零下30度にも下がるような厳しい寒さ。遊牧民は、国境も政府もなかった何千年も前から脈々と、季節ごとに家と家畜と共に移動し、星を見て友達のところに遊びに行っていたのだ。

厳しい環境の中でもたくましく生きる子供達の姿。
玩具がなくてもあちこち走り回って遊び、
一本の長い木の棒と系で器用に魚釣りをし、
少額のお小遣いを手に長い時間かけておやつを吟味し、
すぐにこわれる手押し車を修理しながら薪拾いをし、
編みの荒い不良品の布で作られた上着を嬉しそうに着続ける。
穀物を背負い、手に小さな柳の枝を持ち、山の中の40キロ以上の誰も通らないような小道を通り、徒歩でたった一人、三頭の牛を麓の家へと追って行った8歳の男の子がいた。
作者は小さな子がこんな仕事をするなんてとびっくりしながらも、最後にはこう納得する。

"私が目の当たり当たりにしているのは古くからの、数千年経ってもまったく問題が起きてこなかった生活様式であり、その様式とそれを取り巻く生存環境は平等に共存していて密接に繋がって切り離すことができないくらい自然になっている。その中で成長していく子供たちは、強く、純粋で、あたたかく、静かで、簡単に満足を覚え、容易に幸せになれるのだと私は思った。それもまた自然なのだ"

ここに暮らしていたアルタイの人たちは今どうしているのだろうと、思わずにはいられない。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 旅行記 滞在記
感想投稿日 : 2022年4月2日
読了日 : 2022年4月1日
本棚登録日 : 2022年4月1日

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コメント 4件

地球っこさんのコメント
2022/04/02

マリモさん、こんにちはー♪

素敵、素敵!
とても本書を読んでみたくなるレビュー、さすがマリモさんです。

マリモさんの子どもたちへの視点が、やっぱりちっちゃなお子さまがおられるママさんだなぁと感動しました。

なんだか今、ちょっとセンチメンタルな気分になってます。
アルタイの人たちはどうしているのでしょうね。

マリモさんのコメント
2022/04/02

地球っこさん

こんにちは!知ることのなかったアルタイの遊牧民の暮らしを垣間見ることができました。ありがとうございます。
いえ、私ではこの本の魅力の100分の1も伝えられなくて、
『レビューはこちらをご覧ください→→→地球っこさんのレビュー』
としたいなと思いました笑

厳しい環境下でも、子供ってこんな風に全身で吸収して大きくなっていくんだなぁと、とても感じ入ってしまって。遊ぶ、働く、食べる、、、など全部混ぜこぜで「生きる」なんですね。
私の子供時代もですが、便利に快適になっていくにつれて、生きる実感というのは薄れていくのだろうなぁと。
ウイグルのニュースを見聞きすると苦しくなりますね。
次は冬牧場読んでみます^_^

地球っこさんのコメント
2022/04/02

マリモさん

全部混ぜこぜで「生きる」って、いい言葉ですね(*^^*)

たしかに、便利快適になっていくにつれ生きる実感は薄れているのかも。
少し不便くらいが、どうにかしようと頑張ったり、ちょっとしたことに幸せを感じたり感動したりするかもしれませんね。

冬牧場もぜひ。
マリモさんのレビュー読めたら嬉しいな♪
ゆっくり楽しんでくださいね。

マリモさんのコメント
2022/04/02

地球っこさん
そうなんですよね、便利さ豊かさと幸せって別に比例しないんですよね。幸せってなんだろうと思いますね。

この『アルタイの片隅で』でも、特に遊牧民の話が好きだったのですよ。
『冬牧場』の方は、李娟さんがカザフ遊牧民に同行したときの記録とのことで、とても楽しみです。

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