彼らはなぜ国家を破滅の淵に追いやったのか 昭和陸海軍の失敗 (文春新書)

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たけさん 日本近現代史   読み終わった 

昭和史や昭和時代の軍部に詳しいメンバーが座談会形式で語ったものを活字化した本。一貫して語られるのは、陸軍大学校や海軍兵学校卒のエリートがトップに立つようになった頃から「おかしくなっています」ということ。

「(陸軍大学校には合格した人は)大変なエリートだったわけですが、今の官僚と同じで彼らはやはり受験エリートでした。しかも戦術に特化して、一般教養という点では大いに問題があった」。
海軍では航空機主流の時代に移っても、日露戦争における日本海海戦での圧勝により、艦隊決戦主義から首脳部は離れられなかった。また、政治力が弱いとされる海軍だが、政友会と組んで1930年ロンドン海軍軍縮会議の条約批准に反対するため「統帥権干犯問題」を起こしている。
「軍事だけでなく、広い視野が必要になりますね。しかし昭和の陸軍も海軍もジェネラリストを育ててこなかった」と昭和の陸海軍について語られている。

メンバーの一人である黒野耐氏が『参謀本部と陸軍大学校』で、作戦教育重視の風潮、人文・社会科学のような大局的な視野を養う教育の欠如が相まって、結果的には幕僚としての資質のなさが露呈してしまった、と書いている通りの指摘がなされている。もう一人、こちらもメンバーである秦郁彦氏も『統帥権と帝国陸海軍の時代』で、参謀本部の肥大化・硬直化・官僚機構化、専門職としての参謀養成よりも能吏型軍事官僚養成へ傾いていった陸軍大学校の教育などに言及している。陸軍の話ばかりになってしまったが、海軍については、池田清『海軍と日本』(中公新書)に詳しい。

陸軍も海軍も官僚主義的な膠着した組織に凝り固まっていた。陸軍は「日本社会の縮図」と言われるほどの官僚主義に陥り、海軍は戦時においても平時と同じく人事異動をしたり、結局組織の論理で動いていて柔軟性に欠けていたと言わざるをえない。話し言葉で書かれている点、裏話、逸話なども載っている点で、気楽に読める一冊。

レビュー投稿日
2015年11月5日
読了日
2015年10月1日
本棚登録日
2015年11月5日
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