
近代以降の日本の書籍流通史。内容はかなり専門的で筆致もアカデミック。
建築関係者にとっては第3章「購書空間の変容」がよみどころ。呉服のようにカウンター越しに注文した本を店員に取ってもらう形から、土間に書架を立て、客自身が開架を見て歩き自由に本を手に取ってみるようになるのは明治36年の丸善を嚆矢とし、明治から大正にかけて火災消失等にともなう建替にあわせて空間構造が変化したという。これは背表紙のある洋装本の普及と同時におきた。一方、店の中央には平台がおかれ、急いで売りたい赤本が積まれた。これらの店舗の写真や図版も掲載されている(pp.130-141)。
個人の書斎の書架の導入、教養を顕示する全集セットの家庭普及などを通じて、書籍群による知の構造が内面化していく。
しかし、これが修士論文というのはすごいな。
ペドロフスキー『本棚の歴史』にならべて書架におさめた。
- レビュー投稿日
- 2013年8月22日
- 読了日
- 2013年8月22日
- 本棚登録日
- 2013年8月19日
『書棚と平台―出版流通というメディア』のレビューへのコメント
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