永遠の0 (講談社文庫)

4.42
  • (8994)
  • (4586)
  • (1542)
  • (298)
  • (107)
本棚登録 : 38884
レビュー : 5384
著者 :
あわよくばさん 日本文学:平成以降   読み終わった 

 ひとりだけ特攻を志願しなかった宮部に免じて、この作品への大絶賛の嵐の中で異を唱えることを大目に見てやってください。それと、別に作者のことが読む前から嫌いだったわけでもありません。ただこの先はとてもネタバレであるし、感動した人の興をそぐのは本意ではないので、続きは自己責任で読んでください。長文だよ!













 たしかに感動はできる。
 この作品を読んで、なんとも思わない日本人はいないだろう。けれどもそれは作者の力であるというより、史実と、それが記されていた参考文献の力だろうと思う。
 あえて作者の力を褒めるならば、たくさんの参考文献をうまくまとめたことだし、本筋から脱線したエピソードも戦争を知らない世代が物語に入っていくためには必要だったと擁護できる。わたしは無知で、ここに書かれていた太平洋戦争前後にまつわる様々なエピソードには知らないものが多かった。
 けれども、そこに作者が加えた斟酌や創意工夫が少なすぎるのではないだろうか? 太平洋戦争という歴史上の大事件について、個人や団体が自ら骨を折って史料・資料・証言を集め、分析を加えて著述した本があって、それを読んだ作者が自分に必要な部分を孫引きしてまとめたような、お手軽な感じがする。
 そもそもこういった太平洋戦争パートはほとんどが老人の一人語りによるものだ。どの老人も異様に硬い言葉で話し、豊富すぎる知識を持つだけでなく、人名や階級まできっちり覚えているのは不自然すぎる。参考文献を読んだ事はないけど、安易に借用しているだけのように思えてならない。
 小説家の仕事はそれを血の通った語りに生まれ変わらせることであって、「全ての日本人に知ってもらいたい!」と、どさくさに紛れて自分の主張を突っ込むことではない。

 次に作者の創作した部分について。あれほど強烈に生への執着を見せていた宮部が、生き残れるチャンスを自ら棒に振った理由に納得できない。心情的には理解できるけど、操縦技術の未熟な大石が不時着に失敗したら元も子もないじゃないか。直掩任務で撃墜されていく教え子達を見て変節したというほうがまだよっぽど理解できる。宮部をどこまでも聖人に仕立てようとして、最後の最後に気持ち悪さが残ってしまった。

 なにより納得がいかないのは、健太郎の姉・慶子である。ちなみにわたしとだいたい同い年。
 彼女は「仕事を自由にやらせてくれそう」「本を出すという夢を叶えてくれそう」という打算的な理由で、愛してもいない高山との結婚を考える。これでは真剣に将来を考えているどころか、ただの枕営業でしかない。どうやら作者にとって、女性とは男性の承認を得てはじめて外で働くことができる存在らしい。
 その後、慶子は本命の藤木に高山との結婚をほのめかして、藤木が自分に結婚しようと泣きついてくるが断ろうとする。それを「藤木さんに謝れ」と弟(※ニート)に説教され、祖父の話に感動してやっぱり藤木と結婚しようと決める。徹頭徹尾、男性の言葉や生き方に右往左往する主体性のない女なのだ。お前なんかにフリーライターがつとまるかばーかばーか!
 健太郎が夢や目標を持てない若き現代男性の代表であり、慶子は仕事と結婚の間で迷う若き現代女性の代表として描かれているはずだ。この本を読んで作者のことがちょっと嫌いになった。いみじくも解説の児玉さんが書いているように、「作者の全人格が投影され」、女性蔑視というか、女性への無理解が滲み出た作品となっている。
 戦争の資料を集める前に、Anecanでも読んでろ!


以下最高にどうでもいい疑問

・インタビューするための東京からの遠征費(二人分)はどこから出したんだろう。愛媛、和歌山、岡山、鹿児島、その他関東近郊。交通費だけで軽く20万以上かかる。

・ヤクザの景浦さんは「友達イラネ」とか言ってるわりにちゃっかり戦友会に入ってる不思議。そして松乃を助けにいっちゃう。ツンデレなのか?

レビュー投稿日
2014年2月15日
読了日
2014年2月14日
本棚登録日
2014年2月14日
9
ツイートする
このエントリーをはてなブックマークに追加

『永遠の0 (講談社文庫)』のレビューをもっとみる

『永遠の0 (講談社文庫)』のレビューへのコメント

まだコメントはありません。

コメントをする場合は、ログインしてください。

『永遠の0 (講談社文庫)』にあわよくばさんがつけたタグ

いいね!してくれた人

ツイートする