「ハリー・ポッターと死の秘宝」 (上下巻セット) (ハリー・ポッターシリーズ第七巻)

  • 静山社
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 ついに全部読み終わったぞハリーポッター! 今更ですが、だいぶネタバレを含みますので未読の方はご注意ください。

 第1作『賢者の石』を読んだとき、わたしはまだ高校生だった。すぐにこの物語を好きになった。それから『不死鳥の騎士団』までは発売から間もなく読めたんだけど、『謎のプリンス』からは読めていなかった。いつかいつかと思っているうちに忘れていて、そのうちネタバレが当たり前のようにネット上で垂れ流されて色々と物語の核心部分を知ってしまい、もう読まなくてもいいかな、などとと思っていた。
 でも、2013年に映画がTV放映されるのをきっかけに、手付かずだった『謎のプリンス』とこの『死の秘宝』を読んでみることにした。やっぱり、すごく面白かった。そしてこれまでの物語に驚くほどたくさんの伏線がしかけてあったことに気づき、ネタバレを知る前に続けて読まなかったことをずいぶん後悔した。高価で分厚い上下巻セットを購入してでも、すぐに読んでおくべきだったのだ。『謎のプリンス』の感想にも書いたけれど、それだけハリー・ポッターは面白くて良質なファンタジーで、しかもミステリーでもあったのだから。
 この後から本当にネタバレですよ。






 あーもう知らずに読んでたとしたらどれだけびっくりしてただろうってことがいっぱいある。
 スネイプ先生が実は味方だったっていうのはうすうす感づいてたけど(当初は、本当のハリーの父親はジェームズではなくてスネイプなんじゃないかと的外れな推理をしていたことを思い出す)リーマスとトンクスは死亡フラグがビンビン立ってましたけども、まさかフレッドが死んじゃうとは思ってなかった。これもうっかりウィキでキャラクターの名前を思い出そうと思ってチラ見してたときに知ってしまった。ショックですよ~。母のモリーがベラトリックスを倒したところはぐっときたのだけれども。

 とまあ、誰が死んだとか生き残ったとかについつい目がいってしまうんですが、7巻まで読み終わって一番心に残ったのは、立派な人生を送ったように見える人でも、生涯ずっといい奴であり続けたわけじゃないっていうことだった。ジェームズたちはいじめっ子だったし、スネイプ先生は一度闇に加担してるし(そのうえ味方ではあってもハリーのことは好きになれなかったみたいだし)、あのダンブルドアでさえも一度は権力に魅了されたのだ。
 人は変われるし、成長できる。それが人生の面白いところだな。なかでもネビルがすげえ立派になってて感動した。ずっとネビルはヘタレなイメージだったのに。大人になってホグワーツで薬草学の教授になったんですね。偉い偉いよネビル。
 そうそう十九年後はみんな幸せそうでよかった。ドラコがちょいハゲてたのがウケた。
 「すべてが平和だった。」
 このありふれた一文にたどり着けるまで、ハリーにはなんと時間がかかったことか。

 最後に蛇足ながら、訳者の松岡さんに対する批判を結構見かけるのだけど、彼女が翻訳の専門家ではなかったとしても、たとえ少なからず誤訳珍訳や伏線の見落としがあったとしても、ヴォルデモートがなぜか「俺様」でスネイプ先生がなぜか「我輩」だったとしても(苦笑)、わたしはやっぱりこの人が訳してくれてよかったんだと思う。
 日本人に受け入れられるかわからない状態で、小さな出版社の存続を賭して自分が惚れ込んだ物語の翻訳と出版に携わった松岡さんは立派だと思うし、そういう人がわたしたちの言語で物語を語りなおしてくれるのはありがたいことだ。たとえば大手の出版社が金にモノを言わせて翻訳権を勝ち取って、原文に何の思い入れもないベテランの翻訳家を連れてきて出版するより、たぶんずっとよかったのだと思う。
 あとJ・K・ローリングがOKした人だしね。

 そんなわけで、素敵なシリーズに出会えてよかった、とわたしは思うのでした。ありがとう。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: ファンタジー:海外
感想投稿日 : 2013年12月14日
読了日 : 2013年12月13日
本棚登録日 : 2013年12月13日

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