スタートボタンを押してください (ゲームSF傑作選) (創元SF文庫)

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本棚登録 : 290
レビュー : 37
matthewgpさん SF   読み終わった 

以前紹介した「もののあはれ」の著者のケン・リュウの作品が含まれているということと、「ゲームをモチーフとしたSF作品集」とまさしくドンピシャのテーマ設定により迷わず購入したのが本書。二重にも三重にも好きな内容ということで、あっという間に読了してしまった。行間がやや狭い体裁のために一瞬ひるんでしまうが、一編が短いので、あまり重荷になることなく読了することが出来ると思う。

個人的に面白かったのは「救助よろ」「キャラクター選択」、そしてもちろん「時計仕掛けの兵隊」の3本だ。
「救助よろ」は物語自体はよくあるような謎解きものなのだが、ゲームにより一度も出会ったことがない友人が実際に出会い、旅をして、そして友情を育んでいくというのは極めて現代的なテーマで読んでいて心地が良い。デジタルはリアルと対峙するものではなく、リアルと重なりあうものなのだ。

「キャラクター選択」はFPSで、あえて戦わないという選択をする「わたし」の行動の謎解きが物語を引っ張っていく。ゲーム好きであればあるほど、"ヒーローである主人公"の行動に惹かれるものだが、本作では戦わない選択肢の先にあるものが、本当にこの世界に求められているものであるという逆説的な結末が待っている。日系の作品ではまだまだ「王道の物語」というのが好まれるが、欧米発のFPSではあえて、脇役をプレイヤーとする作品もたくさん出ており、そういった視点の違いからこそ生まれる作品だと感じた。

そして、最後はやはりケン・リュウの「時計仕掛けの兵隊」は、短い作品の中にも現実世界とゲーム世界をリンクさせる構成のうまさが光る。テーマや結末自体はよくあるものなのだが、この作者にかかると全てが淡い絵のように美しい世界へと変貌してしまうのはさすが。・・・というのは、ちょっとひいき目が入り過ぎかもしれない。ゲーム世界の描写は懐かしの名作「ICO」を思い出させる。


海外ものらしく、 日本人には説明不足と感じるような作品も含まれているが、ゲーム好きであれば迷わず買いの短編集。

レビュー投稿日
2018年4月18日
読了日
2018年4月18日
本棚登録日
2018年4月18日
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