終末のフール (集英社文庫)

3.61
  • (1507)
  • (3085)
  • (3305)
  • (623)
  • (122)
本棚登録 : 25485
レビュー : 2082
著者 :
maverick066さん 一般文学   読み終わった 

心地よい終末、穏やかな絶滅、緩やかな破滅、暖かい終焉、優しい破局。

それがこの物語体験だった。

解説でもキューブラー・ロスの「死の受容」の段階が記されていた通り、この作品は否認、怒り、取引、抑うつの段階を経て受容の段階にある人々が残りの日々を過ごす。

一つ一つの物語に派手なところはなく、終始心地よく、穏やかで、緩やかで、暖かく、優しいエピソードに包まれている。

それでも時折、あと3年程で間違いなくこの世界が終わり、自分たちの命も尽きる『最後の時』(p.369)が来るという決定済みの未来が覗いてくる。

その時、主人公たちよりむしろ、読んでいるこちらが恐ろしい気分になり、次のページで「世界の終わりはとんでもない誤報でした」とか「最新の観測によれば世界は終わらない事が確認されました」的な発表がされないかと願う。

その時、あぁ、主人公たちと違って物語を読んでいるこちらはまだ受容の段階に達していないんだ・・と洞察に至る。いや、愕然とする。

死の受容は必ずしも一方通行に進む訳ではなく、時に前段階へ戻ることもある。

この物語はディストピアものであり、終末ものではあるが、ゾンビも銃も出てこない。悲愴感もない。

しかし恐ろしく、心地よい気持ちになる。



その他
『『東京物語』と『帝都物語』って一貫性があるのかないのか、』(p.348)

レビュー投稿日
2019年9月13日
読了日
2019年9月13日
本棚登録日
2019年9月2日
4
ツイートする
このエントリーをはてなブックマークに追加

『終末のフール (集英社文庫)』のレビューをもっとみる

『終末のフール (集英社文庫)』のレビューへのコメント

まだコメントはありません。

コメントをする場合は、ログインしてください。

いいね!してくれた人

ツイートする