虐殺器官 (ハヤカワSFシリーズ・Jコレクション)

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本棚登録 : 811
レビュー : 162
著者 :
Danさん 日本の小説   読み終わった 

一気呵成に書き上げられた、新しい時代のデビュー作として申し分なく堪能できた。間違いなく労作。
ただし、そういった作品についありがちな、使い古された「文学的」な比喩の挿入は少々大げさで鼻についたのが玉にキズ。でもそれを差し引けば、無駄でだらだらした描写は少なく、要領よく構成されて読みやすいのは、読者、それも海外で翻訳されることをも意識されているのか、そんな印象さえ受ける。

端折った感もある。
やや詰め込みすぎかと思えるくらい、21世紀の幕を開けた人類文明が直面している倫理と科学の問題を展開させている。

それにしても、SFは滅多に読まないので詳しくないが、こういう内容が、これまでの日本SFでは書かれなかったのって本当だろうか?それが正直な驚き。
読んでみて、たしかに着想がいいし、そうやすやすと真似できない創作エネルギーに感心するのだけど、本作をもって21世紀日本SFの代表作、とまで世間に持ち上げられるのは言い過ぎだと思う。

むしろ、新しい日本文学、いや世界文学の夜明けを告げる、若いエネルギーに満ちた、記念碑的作品ではないだろうか。

なにせ、心理描写・比喩・構成など、伝統的な文学としての面で見れば、もっと完成度の高い名作は、他に山のようにごろごろあるのだし。

・・・と、つい偉そうに拙い筆を走らせてしまうのは、あまりに本作が注目されすぎ、著者の夭折も相まって(?)、なにやら揺ぎ無い古典のように祭り上げられてる印象が否めないから。でも、話題になっていろんな議論を生じさせるぐらいがちょうどいいのかもしれない。

あと個人的には、本編最後から二つ目のパラグラフにおける主人公の「幻想」が気に入っている。「大げさな幻想」は、ここの文脈に一番ふさわしいと思った。(2013/11/9、編集)

レビュー投稿日
2013年11月9日
読了日
2012年8月18日
本棚登録日
2012年8月18日
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