リヴァイアサン

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本棚登録 : 136
レビュー : 11
制作 : Paul Auster  柴田 元幸 
M-CHAMPさん 2010   読み終わった 

失踪した友人が「ファントム・オブ・リバティ」として爆死を遂げた――新進作家から爆破犯へと変身した友人ベンジャミン・サックスについて、回想、伝聞を元に記録を紡ぐ作家ピーター。しかし彼が描くのは、サックスの人生をなぞる物語というより、ピーター自身を含むサックスを取り巻く人間たちの人生の輪が相互に絡み合う、一本ではなく複数の輪郭を持つ緻密で複雑な物語世界だ。様々な証言で綴られるサックスの物語は、最後まで何が真実で何が虚構か、女神像の爆破行為の理由は一体何だったのか、決定的な回答がないまま終わりを迎える。サックスの未完作品のタイトルでもある「リヴァイアサン」という表題は、ホッブスの著書のイメージが強いが、元はと言えば聖書に登場する怪物の名前でもある。あえて政治的な意味を持たせてのタイトルではなく、運命というには余りに乱暴な、偶然の繋がりやタイミングが起こす小さなきっかけが人生の輪と輪を結び合わせ、ほどき、思わぬ道筋へ押しやっていく、その止められない流れそのものに与えられたタイトルなのだろうと個人的には受け止めた。おそらくこの小説でオースターが描きたかったのは、回り続ける人生の輪の運動そのものであり、この複雑で美しい輪と輪の織り成す紋様には、明確なゴールは(そしてスタートも)必ずしも必要ではないということなのだろう。

レビュー投稿日
2010年10月12日
読了日
2010年10月9日
本棚登録日
2010年10月12日
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