キッドナップ・ツアー (新潮文庫)

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本棚登録 : 2388
レビュー : 321
著者 :
めいさん  未設定  読み終わった 

安い感動で親子の絆を強調した物語でないところが好感度高い。あくまで小学5年生の女の子目線で語られており、両親の取引内容とその結果や、その後の父と娘の関係などには一切言及されていない。その一方で、成長期の女の子特有の感受性による、他人あるいは自分の心の機微については実に細やかに、素直に描かれている。心と裏腹になるハルの態度も、娘に気を遣う父やそれに気づいたときのハルの感情も、誰しも覚えがあるもので、ああ、わかるわかる、と共感しながら(思い出しながら)読み進めることができた。
物語全体を通して娘と父親のやりとりに終始しているところもいい。母親は終ぞその姿を現さないし、その姉妹は言わずもがな、ハルの記憶や言葉にしか登場しない。父と娘のみを軸に展開するにも関わらず、物語に閉じた印象を与えない、むしろ「親娘」ではなくそれぞれ立派な「個人」としての開けた人間関係を、終盤ハルは新たに見出したように思えた。その結果が爽やかな読後感を読者に与えているように思う。
それにしてもハルはすごい言葉を父親に投げつけるなあ、でも言えなかった言葉の方がずっと多い(きっと父親も同じだろう)、その不器用さも愛すべき要素だな思った。

レビュー投稿日
2019年1月12日
読了日
2019年1月11日
本棚登録日
2019年1月4日
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