文豪さんへ。近代文学トリビュートアンソロジー (MF文庫ダヴィンチ) (MF文庫ダ・ヴィンチ)

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meguさん  未設定  読み終わった 

6人の作家が昔の文学作品とそれをモチーフにした短編、そして文学作品を語るという企画の本。

近代文学作品は
 夏目漱石『門』
 中島 敦『山月記』
 葉山嘉樹『セメント樽の中の手紙』
 坂口安吾『桜の森の満開の下』
 新美南吉『手袋を買いに』
 芥川龍之介『トロッコ』
の6作品。

以前、森見登美彦の『新訳・走れメロス』を読んだ。

それも、走れメロスや山月記などの話をモチーフに森見ワールド展開したもので面白かった。

ただ、原作を知らないものが多かったため原作を読んでみたいなと思っていた。

この本はどこから読んでも大丈夫なので山月記のところから読み始めた。

山月記は漢文調で書かれた12ページという短い文章であっという間に読み終わってしまう。

そして、田口ランディがその話をモチーフにした話『虎』と田口ランディのおもう山月記についての文を読む。

森見さんの山月記が私のベースになってしまっているため、中島敦のほうの感想はああ、原作はこうだったんだ、という感想。

山月記は高校の教科書によく載っているらしいことが書いてあったが、残念なことに私は学生時代にはめぐり合わなかった。

意味が通じるのでとざっと読み流してしまうのだが漢字などちゃんと読んで行ったらまた面白そうだと思う。

『桜の森の満開の下』は首遊びが怖い。ひたすら怖い。

これも森見登未彦の「新訳 走れメロス」に収録されていた。

そちらはテイストは残しつつも部隊も現代の京都に移し構成されていたし首遊びはなかった。

この本でもトリビュートということで夢枕獏が安倍清明を主人公にトリビューと小説を書いている。

それも、怖くなかった。むしろほほえましい。

順番としてトリビュート版、それを書いた人のなぜ選んだかなどの説明、原作となっている。

坂口安吾の原作。

何となく素朴な山男と我儘な都女の純なラブストーリーを装っているのに誤魔化されそうになる。

だが、山男は山賊でものすごい数の人を殺めているのに純も何もあったもんじゃない。

そしてファンタジーと考えても女の感情が不可思議。

女の夫を殺され半ば強引に妻となり、男の妻たちを殺させて男と暮らし続ける。

都に移り住むと都人を殺し首遊びに興じる。

狂ってる。恐ろしい。

男を愛している風でもないのに、男が山に帰るというと一緒じゃないと嫌だと泣き一緒に帰るという。

一緒に山へ帰るときに女をおぶって満開の桜の下を通った時、男は背中にいるのは鬼婆だと感じ絞め殺してしまう。

しかし、首を絞めたのは妻だった女でその屍体があるばかり。

男がその屍体の桜の花びらをとってやろうと触れると屍体は掻き消えてしまう。

さて女は鬼なのか人なのか、はたまた桜の精霊か。

とても素敵な狂気的で耽美的なファンタジー。

桜の木と屍体の関係は何時誰が始まりなのだろう。

今までは桜の季節になると梶井基次郎の『桜の木の下には」を思い出した。

これからはこの物語も合わせて思い出すことになるだろう。

レビュー投稿日
2016年9月18日
読了日
2012年6月27日
本棚登録日
2016年8月4日
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