ゼロ、ハチ、ゼロ、ナナ。 (講談社文庫)

著者 :
  • 講談社 (2012年4月13日発売)
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本棚登録 : 10818
感想 : 872
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女性作家の方でないと、これは書けなかったのではないか。と、思う。微妙な女性の心の動きや気持ちを、何ならものすごく複雑に書き綴っている。共感するところも、共感しないところもありながら、ただただ、胸が苦しくなった。
婚活、結婚、仕事、出産、そして地方都市と東京…みずほとチエミ。
30歳という歳だからこそ疎遠になった彼女たちの、複雑な思いが絡み合った友情関係。物語はチエミの母親の殺害事件と同時に彼女の失踪事件でもう一度、手を繋ぎたい、探したいとみずほが腰を上げるところから始まる。
当時、仲の良かった友達と、チエミの会社の同僚などに話を聞き、みずほが連絡を断っていた期間のチエミの背景を掘り下げていく中で、チエミの、そしてみずほの、周りの人たちの複雑な女性特有の感情が溢れ出す様に渦を巻いていく。そこに、赤ちゃんポストという大きな存在が。
少しづつ、真相に近づいていく感じは、ミステリーの様でした。
そして、私は悲しかった。30歳という年齢の迫りくる強迫観念は痛いほど分かるし、あのドロドロ感もとても分かる。でも多分、この小説はそれだけじゃなくて、これから先、歳を重ねていく過程の中で、それがこの時期の必要な試練だったのであれば、どう乗り越えるのか。自由に解き放たれて色んな生き方や幸せが、特殊なことじゃなく、普通に転がっている世界になればいいなと思う。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 小説
感想投稿日 : 2019年12月31日
読了日 : 2019年12月31日
本棚登録日 : 2019年12月31日

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