魅惑的な西洋アートの通史。「美とはなにか」をうっとりするような図版と引用ともに1週間以上かけて読み進めたのは贅沢な時間だった。記号論の泰斗エーコは西洋における古代から現代にいたる各時代の芸術を特色づける象徴と意味を明快に解読する。するとあら不思議、魑魅魍魎が手術台から逃げていく。実際、西洋美学は、調和と輝き,理論と神に支えられながらも、裏から底から、不安や幻想、謎や暗黒がひっきりなし顕現するのだ。端的にいえば調和と不協和、意識と無意識、光と影の二元論が永遠に交替するよう。計測され構成された理性の世界というのはそれだけ抑圧が強いのか。それはグローバルな世となり西洋東洋南洋北洋の彼我の壁は取り払われ、人類ひとくくりとなった今も変わりはない。美学は芸術ということばに隔離され絶滅に向かったのではなく、逆に普遍化顕在化して大量生産。根源的不安も抱き合わせに拡散しているのだなと実感する。やはり人は美から切り離せないと美にとりつかれたわたしは考える(しかし本書で視覚に訴える絵画が強い磁力を発するのに対し、翻訳されてしまった「ことば」はやはり鮮度が落ちる。もちろん音楽は表記できない。本にまとめるのも大変だ)
読書状況:読み終わった
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カテゴリ:
西洋美術
- 感想投稿日 : 2020年4月23日
- 読了日 : 2012年8月6日
- 本棚登録日 : 2020年4月23日
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