哲学の冒険 (平凡社ライブラリー)

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レビュー : 11
著者 :
meirin213さん  未設定  読み終わった 

内山節『哲学の冒険』読了。内山節という人は俗に言う「哲学(を研究する)者」ではなく、まさに「哲学する人」なのだ、と(彼の講義に数回しか出なかったことを申し訳なく思う反面、そのれでも彼の言葉にひっかかりを覚えてこれまで彼の本を何冊か読んでいるのは、比較的僕の言動にマッチしているからだけではなく、そのような後ろめたさがある種の原動力となっているのかもしれない)。「自分の手で働いて生きていく」ための哲学を模索する「僕」の冒険のなかで、内山は非マルクス系の初期社会主義思想を「存在論的社会主義」とよびならわして、高く評価している。内山の「労働」を「作品」としてとらえかえす試みは、労働というものが本質的にもっているとする喜びや尊厳というものを創作の喜びや創作物および創作者への敬意、自らの創作物ないしは創作活動に対する誇り、それらへの比喩的な連想をスムーズに呼び起こしてくれる。
そこで考えさせられるのは果たしてこの僕は何か内山の言う労働らしい労働を成しているのか。実際に本書でも第3部で「僕」と対話する「父さん」が企業での労働者として僕自身が直面しているような苦悩を述べている。
ただ、重要なことには内山における「労働」あるいは「作品」の射程というのは何も賃金や報酬を前提とする狭義の労働に限定されず、ひととひととの関わり、ひとと社会との関わりにまで及ぶ。この辺の発想というのは、先日中之島哲学コレージュで出会った現代戯曲家?の岸井大輔のそれと近しいものがあるように思う。
なんにせよ、平日昼間の労働の作品性に本質的な限界を感じるのならば、その外でいかに魅力的な作品をつくりだせるか、いかに可能性のある作品を築けるか、当面はその路線でいってみよう、そんなことを思わせてくれた本だった。

レビュー投稿日
2014年3月15日
読了日
2014年3月15日
本棚登録日
2014年3月15日
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