精神分析的人格理論の基礎―心理療法を始める前に

著者 :
  • 岩崎学術出版社 (2008年7月14日発売)
4.54
  • (15)
  • (10)
  • (1)
  • (0)
  • (0)
本棚登録 : 105
感想 : 10
4

精神分析の歴史も交えつつ、精神分析的人格理論について平易に解説された一冊。
全ての理論が、全ての用語が実はバラバラなようでつながりを持っている
ひとつの体系立てられたものだということが強調されて解説されており
それも分かりやすいので、読んでいて目から鱗が落ちるようだった。
ただ、あまりにも分かりやすいので、納得した気になってその実ちゃんと
自分の中で理解を作っておけなかったのではないかなと、読み終わって不安にもなった。
何回も読んで、咀嚼して、自分なりの理解を作るための本なのだろうな。
以下は気になった、面白かった点のメモ。
・自由連想法の誕生には、催眠暗示療法、催眠浄化法の効果が一時的なものであることが分かり
 起きたまま自由に喋られるようになることをフロイトが目指したことがきっかけとしてある。
 しかし、その当時のヒステリー患者は上流階級の貴婦人が多かったため
 フロイトの理論では性的なことが中心になってしまっている。
・自我とは、自己概念と自我機能を果たすことという二重の意味を持っている。
・青年期で超自我の作り直しが始まり、超自我は成長することで自我理想になる。
 それまでは葛藤があって行動を修正していたのが、理想に照らして行動したいと思うようになる。
 超自我も「まとまり→人格化→非人格化→抽象化→統合されて自我理想」というプロセスを経る。
・エスの中にあるのはリビドーとアグレッション。それにまつわる記憶・感情・連想・願望なども
 エスの中にあるのだが、そのまとまりをユングはコンプレックスと呼んだ。
・防衛機制とは、欲動が強すぎると自我退行して、自我が適切に使えず
 もとの衝動に結びつく形でそれが表現されるのを防ぐためにある。
 健全な人と神経症的な人は連続的なので、これは健康な人も使う。程度の問題。
 また、どんな欲動も1度は抑圧されて、他のメカニズムで表現される。
・治療構造を守るのは、退行を一時的部分的にとどめられるようにするためである。
・境界的人格構造の章が面白かった。たとえばASDの人たちは、言葉の発達が不十分
 すなわち自我の強さもそれほどではないと思われるけど、そういう人たちは
 部分対象の統合が難しいだろうし、BPOになりやすいのかなぁ。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 心理学・精神医学
感想投稿日 : 2011年8月9日
読了日 : 2011年8月9日
本棚登録日 : 2011年8月9日

みんなの感想をみる

コメント 0件

ツイートする