シン・ニホン AI×データ時代における日本の再生と人材育成

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  • NewsPicksパブリッシング (2020年2月20日発売)
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SFCで教鞭を取られているYahoo!安宅さんの著書。Twitter上で「現代の学問のすすめだ」と言及されていたように、日本の現状を踏まえ、これからどのような舵を切っていくべきかという指針が提示されている。内容は多岐にわたり、到底まとめることはできないが、特に印象に残った箇所を引用する。

「ではマネジメントとは何をやっているのかといえば、結局のところ、
(0) あるべき姿を見極め、設定する
(1) いい仕事をする(顧客を生み出す、価値を提供する、低廉に回す、リスクを回避する他)
(2) いい人を採って、いい人を育て、維持する
(3) 以上の実現のためにリソースを適切に配分し運用する」(p.146)

「人生でもビジネスでも直接的な競争はできるだけ避けるのが正しい。実質的な無競争空間を生み出せるかどうかが、幸せへのカギだ、競争から解き放たれたとき、人も事業も自由になれる。」(p.155)

「我々の持つ知性とAIのもっとも本質的な違いの1つは、AI、機械知性はイミを実感のあるものとしては何も理解していないということだ。単に情報処理を自動化しているだけであり、何を行っているのかすら理解していない。つまりAIは、識別は見事にできても本質的に「知覚」していないのだ。」(p.192)

「「気づき」と「新しい知識」は本質的に異なる。」(p.199)

「あらゆる戦略は目指すべき姿の正しい見極めと現実の正しい理解から始まる。戦略立案とは、構造的に世の中を見立て、そこでも勝ち筋を見極め、これを具体的な実行プランに落とし込むことだからだ。WhatとHowをつなげて初めて戦略と言えるが、その立脚点は常に正しい現状の理解だ。」(p.266)

「あまり語られないことではあるが、課題解決には大きく2つの型がある。1つは、病気を治し健康にするといったあるべき姿が明確なタイプの課題解決。もう1つがあるべき姿(ゴールイメージ)から定める必要があるタイプの課題解決だ。」(p.391)

このほかにも印象に残った箇所は多いが、これから企業の戦略立案に携わる立場として、特に心に留めておかなければならない箇所のみ抜粋した。

少し話は変わるが、この本は全国民必読だと思うと同時に、かなりハードコアな内容であることも間違いない。これから社会を創り、支えていく立場の自分たちにとって、ビジネス、データエンジニアリング、データサイエンスという3つのスキルは必須であり...と言われても、「頭では分かるが、難しい」となってしまいかねないとも思う。ただ、構造的に整理されたデータを見ていくと、日本がかなりまずい状態なのは間違いない。当然、自分の興味領域を探究しながらも、やや苦手としている数理系の思考や、データエンジニアリングとは向き合わなければならない時が来ているのだと思う。本当に未来を創り、バリューを出していきたいのであれば、この点についてはNO EXCUSEであり、努力してどうにかなる範囲までは鍛錬を積まねばならないと強く感じた。これは非常に良い指南書であるが、読者が動かなければ意味がない。これから現実を直視し、自分の存在を位置付けながら、どのような未来を創っていくかがイシューとなる。少なくとも自分は、創る側でいたいと思う。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 教養
感想投稿日 : 2020年3月2日
読了日 : 2020年3月2日
本棚登録日 : 2020年2月20日

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