タイトル通り、本をめぐる8編の物語。
『ぴったりの本あります』
奇妙な物語だ。
この手の話はすでに幾度も語られているというのに、「猿の手」を求めて読者は再びページをめくる。
三度まで。
この三という数字はなぜこうも心をざわめかせるのだろう?
登場するのは電子書籍という現代的な「本」だが、恐怖の根源は今も昔も変わらない。
きっと、今後も。
『『馬および他の動物』の冒険』
本が、しゃべる。
古書店の中で本同士が話している。
なんとも愉快な設定だ。
その本がある日、他の5冊とともにある人物に盗まれる。
ここから本の冒険が始まった。
この物語は単なるファンタジーではなかった。
本作には初めから十分な伏線が張ってあった。
それに気づいた時、この本は、いや、読者はやっと甘い夢を見られることだろう。
『僕たちの焚書まつり』
本、紙の本がなくなった世界。
小学五年生の僕、タツキは地雷コンテンツ(つまりとんでもなくつまらない文章)をみんなで壊すことにした。
確かに叩きつけたくなるつまらなさの本もこの世にはある。
気持ちはわからないでもない......。
タツキはそうして、その地雷コンテンツを壊そうとするのだけれど、思いがけず「本」の亡霊を見ることになるのだ。
面白いのがタツキの父が言う、神印刷は指を着ることもあり、安全配慮に欠けているとぼやくところ。
それには心から同意する(ははは)。
本一冊には本当に多くの人の手がかかっている。
それを「亡霊」としてみることで、こうして本が読めることのありがたさを噛みしめるのだ。
- 感想投稿日 : 2015年12月28日
- 読了日 : 2015年12月15日
- 本棚登録日 : 2015年12月28日
みんなの感想をみる