本をめぐる物語 栞は夢をみる (角川文庫)

  • KADOKAWA (2014年3月25日発売)
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本棚登録 : 643
感想 : 66
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タイトル通り、本をめぐる8編の物語。

『ぴったりの本あります』
奇妙な物語だ。
この手の話はすでに幾度も語られているというのに、「猿の手」を求めて読者は再びページをめくる。

三度まで。
この三という数字はなぜこうも心をざわめかせるのだろう?
登場するのは電子書籍という現代的な「本」だが、恐怖の根源は今も昔も変わらない。
きっと、今後も。

『『馬および他の動物』の冒険』
本が、しゃべる。
古書店の中で本同士が話している。
なんとも愉快な設定だ。
その本がある日、他の5冊とともにある人物に盗まれる。
ここから本の冒険が始まった。

この物語は単なるファンタジーではなかった。
本作には初めから十分な伏線が張ってあった。
それに気づいた時、この本は、いや、読者はやっと甘い夢を見られることだろう。

『僕たちの焚書まつり』
本、紙の本がなくなった世界。
小学五年生の僕、タツキは地雷コンテンツ(つまりとんでもなくつまらない文章)をみんなで壊すことにした。
確かに叩きつけたくなるつまらなさの本もこの世にはある。
気持ちはわからないでもない......。
タツキはそうして、その地雷コンテンツを壊そうとするのだけれど、思いがけず「本」の亡霊を見ることになるのだ。

面白いのがタツキの父が言う、神印刷は指を着ることもあり、安全配慮に欠けているとぼやくところ。
それには心から同意する(ははは)。

本一冊には本当に多くの人の手がかかっている。
それを「亡霊」としてみることで、こうして本が読めることのありがたさを噛みしめるのだ。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 日本文学
感想投稿日 : 2015年12月28日
読了日 : 2015年12月15日
本棚登録日 : 2015年12月28日

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