乙女の美術史 日本編 (角川文庫)

  • KADOKAWA (2016年7月23日発売)
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感想 : 5
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乙女というには薹がたち過ぎてしまった私であるが、まだ心には乙女の名残がある。「キュン」とする心、それを刺激された。

半年間美術館に行けずにいた。
数ある展覧会のチラシを見て、広告を見て、飢えた心を慰めていた。
そして出会った本書。
知らないことの多さに嬉しさを覚える。

第一章で衝撃的だったのは、阿修羅の物語。
阿修羅は娘の舎脂を帝釈天に陵辱されていた、上に、娘は帝釈天の妻になっていた!
阿修羅に娘いたんだ、やっぱり顔は三面あるのかしら、帝釈天って仏教の守護者だったはずでは。
『聖おにいさん』の帝釈天の見方が変わる。

第二章の近世編での驚きは、平賀源内は男色家であり、あまりに恋人が好きすぎてBL小説を出していた、という点。
それがかの『根南志具佐』だったとは。
突き詰めれば教科書にも載るもんだ......。

菱川師宣、鈴木春信、琳派、歌麿、写楽といった大家たちが登場する。
若冲は必見。
今一番アツい人物、伊藤若冲!
過日行われた展覧会は人の頭を見に行ったのかと勘違いするほどの盛況っぷり。
老松白鳳図のハートマークはLOVEのハートにあらず、でも、モダンな印象。
このなまめかしさもさることながら、金泥を使わずに金を表した超絶技巧は驚きだ。

そしてもう一つ、にわかに注目を集めるのが「春画」。
春画展は見に行けなかったが、別の展覧会で見たことがある。
いやらしい、より面白い印象。
性とはハレの物。
各地にある金精様信仰と根を同じくしているのかもしれない、とは素人の邪推。

三章の近現代では高村光太郎、竹久夢二、中原淳一のイメージを大きく変えられた。
人は一面的ではないのだな......。

上村松園、小倉遊亀、片岡球子らのような女性アーティストと比べてみると、男性の方が「夢見る夢男ちゃん」に思える。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 芸術
感想投稿日 : 2017年4月27日
読了日 : 2017年1月3日
本棚登録日 : 2017年4月27日

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