沢木道楽堂怪奇録最後の魔女 (メディアワークス文庫 て 1-3)

著者 :
  • アスキー・メディアワークス (2012年12月25日発売)
3.38
  • (1)
  • (12)
  • (17)
  • (2)
  • (0)
本棚登録 : 100
感想 : 11
3

悪意に対してなす術を私たちは持たない
シリーズ2作目だが、前作を読んでいなくても特に問題はない。

『ほらこの夜、またあいつらが』
得体の知れない、黒い人間のようなもの。
イメージとしては口裂け女だろうか。
いや、もっと忍び寄るもの、理不尽なもの。
じわじわと迫ってくる恐怖と全くもって理由の見えない悪意。
結論を出さないことがなお恐ろしい。

隣同士の関係が希薄になっている都市。
それはそれで煩わしさがなくて良いのかもしれないが、そこに潜む悪意を象徴するような物語である。

『きみに照らされて』
上記物語とはうってかわって、心温まる物語。
命を考えさせる。
生と死は表裏の関係にある。
死は誰にでも等しくやってくる、命あれば死もある。
そうわかっていてもなかなか受入れがたいものが「死」。
猫を通して見る命の物語だ。

『最後の魔女』
悲しいだけならまだよかったのに、恐怖と悪意の連鎖が起きることを示唆する終わりかた。
あまり好きな物語ではない。
話として面白くないという意味ではない。
救いようがなくて嫌な気分になるのだ。
劇中劇は希望を持った終わりかたであるだけにその気持ちが大きくなる。

それにしても、沢木道楽堂と銘打っていても、沢木は何もできず、主人公らしさがない。
活躍しない主人公というのもそれなりに面白いが、存在感が薄すぎる。
今後沢木自身も変わっていく、のだろうか?

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2014年1月7日
読了日 : 2013年12月31日
本棚登録日 : 2014年1月7日

みんなの感想をみる

コメント 0件

ツイートする