悪の出世学 ヒトラー・スターリン・毛沢東 (幻冬舎新書)

著者 :
  • 幻冬舎 (2014年3月28日発売)
3.43
  • (8)
  • (35)
  • (31)
  • (10)
  • (2)
本棚登録 : 404
感想 : 46
4

世界中の誰に尋ねても知っているであろう、3人の指導者。
彼らは今でも人心を良くも悪くも引き付け、そこかしこに現れる。
彼らも、いいところはあった、そういう人もいるだろう。
それは否定しない。
人の評価というものはその時々で大きく変わるからだ。
ただ、なぜ彼らが悪とされるか。
それは彼らが、多くの人々を直接的、間接的に死に追いやったからだ。
このことはどんなに言い訳しようとも、なくそうとしても事実なのである。
それを踏まえた上で、彼らがどのように上り詰めていったか、出世の「極意」がここにある。

まずはスターリン。
鋼鉄の人、と自ら名乗った。
彼は人の弱みを握り利用し、そして誰も信じないことで登って行った。
これはすごい。
一体何が彼をここまで歪めたのか私には全くわからないが、ためになりそうなものも中にはある。
情報は自分が管理する、面倒な実務こそ引き受ける。
地味な作業だが、確かにこれをやると、組織は自分がいなければ動かなくなる。
さすがに現代社会においてそれは難しいだろう、と思ったが、いやいや、危機管理が万全な大企業ならともかく、そうでない企業ならこれは十分通じるに違いない。
情報を把握するという意味では先見の明があった。

次にヒトラー。
手におえない分野は無理をせず適任者に任せる、勝てる相手としか戦わない。
逃げるが勝ち、なわけだ。
非常に臆病な人物だったように思う。
臆病だからこそ、外堀から埋めていく戦法が性に合っていたに違いない。
そして何よりスピーチがうまかった。
これが彼を作る上で重要なキーワードだ。

最後に毛沢東。
耳に心地よいキャッチフレーズを使う、具体的な失敗を批判されたら抽象論でごまかす。
あれ????これは最近の話だろうか??
一つの目標に向けて人々を煽り、盛り立てる手腕は実に見事。
キャッチフレーズは知らず知らず人心に入り込む。

さて、彼らの出世術で使えるものはいくらでもある。
ひどいな、おかしいなと思っても、その最中に人は気付かない。
言葉が上手というのは大衆を動かすには必須。
コミュニケーションが大事、というと綺麗に聞こえるが裏を返せばこういうことだ。
それを善の武器として使うか、悪の武器として使うかの違いだけで。
彼らのようになれというのではない。
彼らがなぜ強大な権力を持ち得たのか、それを知ることで、自分は何ができるかを考えるきっかけになるし、指導していく立場として何が恐ろしいかも学べる。
ひどいよね、悪いよね、だけではなく、そこから何を感じ取り良き方向に持っていけるか、それがもしかしたら、彼らの一番の功績であるかもしれない。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 歴史
感想投稿日 : 2015年11月10日
読了日 : 2015年11月4日
本棚登録日 : 2015年11月10日

みんなの感想をみる

コメント 0件

ツイートする