無頼派の旗手、太宰治に朽木糺という名を付し、15歳の女学生さくらの心を通してその死までを描いた作品。あたたかさと厳しさと冷静さを持って朽木を見つめるさくらこそが、朽木の〈謎の母〉なのだ。
太宰の『女生徒』を意識したかのような語り口は、作者の太宰に向けた親愛の情の表れだろうか。『蕭々館日録』といい『謎の母』といい、作者は小説家が好きなんだなぁと思う。というより、大正だとか、昭和だとか、そういう時代を生きた人々が好きなんだろう。
この作品では登場人物の名前の付け方にも感嘆する。朽木、さくら、サチ子、鮎郎…。
ついでにいうと、川上弘美氏による解説もなかなか美しい。最近は解説になっていない解説が多いので、こういう解説はありがたい。
読書状況:読み終わった
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カテゴリ:
久世光彦
- 感想投稿日 : 2012年9月27日
- 読了日 : 2000年7月11日
- 本棚登録日 : 2012年3月23日
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