江戸アルキ帖 (新潮文庫)

  • 新潮社 (1989年4月28日発売)
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鎖国時代、徳川家支配・幕藩体制の中央行政府・江戸は、大阪という『天下の台所』から一方的に消費財の供給を受ける一大消費地であり、武士は薄給でも体面を保つ義務があり、異性との出会いもなく大変だったが、向上心の無い一般町人にはのんびりとした暮らしが保障されていたらしい。一日の仕事は午前だけのせいぜい4時間、観劇や園芸や魚釣りを楽しむ人々。ゼロ成長のもと、没落してもさほど恥ずかしくない。富裕層は養子や番頭に人を得て事業を継続させようとするが、道楽も許容されている。新陳代謝が生体を維持するように、武家も商家も世代交代には実子も訓育するが資質を見極め利発な婿養子や養子を迎え、商家は武家株を買って家格を上げることもできるシステム。
 文献史料もさることながら、北斎・広重などの道中記浮世絵など絵画史料があるから、応用してこれだけの想像創作が出来る。人口でも識字率でも常備武装兵力でも世界一の都市であった江戸(黒船の火力にだけはおじた)は文化(大宰治に言わせると文華)でも世界一であったと思う。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 青年漫画
感想投稿日 : 2020年5月15日
読了日 : 2011年12月21日
本棚登録日 : 2020年5月15日

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