予防医学を研究している博士の石川氏と、ラジオアナウンサーの吉田氏が、幸せになる方法、について科学的なアプローチをどうすべきかというテーマについて対談している一冊だ。
本筋とは関係ないのだが、100年前の人間はIQが平均70程度しかなく、犬、猫、稲の分別が「動物と、植物」という風にできなかった(現代なら恐らく子供でもできる)という話題には驚いた。たかだか数世代でそんなに変わるのか。
こういうちいさな知識があちこちに織り込まれていて興味深い。
人間は3つの異なったコミュニティからおすすめを受けると良いものだと認識する、とか、複数のコミュニティを持っている人間の方が長生きする、とか、起業は50代から始めたほうが成功率が高い、とか。
自分の好きなことや得意なことを突き詰めること、ただしそれだけに依らず苦手なものや嫌いなものにも振れ幅を持つこと、が最終的に幸福への道筋になる、というようなことを言っていて、なるほどなと思う反面、これはある程度の生活水準を満たしている人達に向けた話だよなぁとも思う。
この本の読者ターゲット層がおそらくそういう人達なので、その結論でいいんだろうけれど、では生活がギリギリで安定した仕事も得られないような人たち、好きとか得意とかよりも前にまず食べていかなければいけない人たちは、どうすれば幸せになれると科学は答えてくれるんだろう?と思う。
自身の研究分野について「副作用は何か」「悪い部分は何か」を問われたときに、怒らずにちゃんと回答をくれる研究者がよい研究者、というくだりは納得。
ようするにどれだけ理性的に物事を俯瞰して見られるか、そういう視点を持てるかが科学者としての力量なんだろうな。
その視点で、精神的にではなく物理的に生活が苦しい人の幸福について、石川氏に語ってほしいな、と思った。
- 感想投稿日 : 2018年3月25日
- 読了日 : 2018年3月25日
- 本棚登録日 : 2018年3月25日
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