祖師ヶ谷大蔵の閑静な住宅街にある、瀟洒な屋敷に、ひとりの女が訪れる。ある覚悟を持って、その屋敷で家政婦として働くことになった暁子と、時を遡って、松涛の屋敷にお手伝いとして雇われることになった佳恵。
どちらも、仕える相手は天真爛漫で美しく、我儘でありながらも心優しい女主人、鈴子だ。
ふたりの女が、秘密と過去をちらちらと覗かせながら送る日々を、語り手の視点や語られる時代をさまざまに移り変わらせながら物語は展開する。
次第に明らかになる秘密や過去はどちらかというと凄惨なものでありながら、解きほぐされて見えてくる真実は、切なく、悲しく、どこか優しさを伴っている。
親子、夫婦、さまざまな家族の形があるけれど、幸福なかたちというものに定まりはないんだろう、とふと思う。
読書状況:読み終わった
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なにか考えたくなる
- 感想投稿日 : 2018年12月9日
- 読了日 : 2018年12月9日
- 本棚登録日 : 2018年12月9日
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