
新聞に掲載するラジオ・テレビ欄の作成と校閲を仕事にしている非正規雇用者の広田、岸の物語。物語、というか、タイトル通り<会話>、あるいは<思考>の断片で成り立っている一冊だ。
働くことは詩を詠むこと、という言葉が途中で出てくるが、まさしく詩篇のように感じる箇所もあった。彼らの社会生活を語っているようでありながら、概念を詩にしているようでもある。
抽象的な印象を抱くことが多い山崎ナオコーラの作品は、時折はっとするくらい、ああそうだな、と頷きたくなるような「当たり前のこと」を的確に言葉にすることがある。
なんでもかんでも得するよう努力することが人生の近道という理はない、とか、仕事をしていて相手を非常識だと思う時は相手もそう思っているだろう、とか、改めて言葉にされると、すとんと胸に落ちる。彼女の作品はこういうところが好きだ。
- レビュー投稿日
- 2009年9月3日
- 読了日
- 2009年9月3日
- 本棚登録日
- 2009年9月3日
『ここに消えない会話がある』のレビューへのコメント
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