木工作家の著者が、自身の描いた絵と短いエッセイを折々に綴った一冊だ。
多芸、というのはこういう人のことなのかなぁ。板、テンペラ、場合によっては漆も用いた絵はとても趣があって美しく、すばらしい。
思考も深く、ひとつひとつのエッセイにふっと考えさせられるような文章が潜んでいて油断ならない。
頭のいいひと、思考することを止めない人の文章だな、と思う。
ただ頭でっかちなのではんなく、手を動かして考えを導き出す、その動作と思考が結びついているところもいいな、と思う。
実際に生活をする手を持った人の哲学がここにある、と感じる。
両手のひらをあわせて比べると、右手(利き手)のほうが指が短い、というのは、自分もそうなので本当に驚いた。日々当たり前に見つめている物事の中にも、言われなければ気づかないことがある。
利き手が短い理由を「手がたくさん仕事しているから」とする著者のまなざしはとても優しいと思う。
私の右手が左手より少し寸詰まりな理由も、そんなことならいいな。
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
好奇心が満たされる
- 感想投稿日 : 2011年3月22日
- 読了日 : 2011年3月22日
- 本棚登録日 : 2011年3月22日
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