ミハイル・ゴルバチョフ 変わりゆく世界の中で

  • 朝日新聞出版 (2020年7月20日発売)
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感想 : 8
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図書館への返却期限が今日だということにおとといの夜に気づいて、そこから必死で読み切った。

非公式の会話も含むけれど、基本的には「ゴルビー君が各国トップと交わしたオフィシャル問答集」という構成だったので、礼節たっぷりな独特の言い回しが延々と続いて、目が滑る滑る。
返却までに読み終わらないんじゃないかと焦った。焦って読むとさらに目が滑るのよね~。
ちゃんと全部読解したか自信ないなぁ。

本の前半はレーガンとの核兵器削減への道のり、後半はベルリンの壁とソ連のダブル崩壊について。

前半はかなりいい感じでかじ取りをしているゴルバチョフだが、後半になると様相が違ってくる。
時流に乗ろうとしている人たちに何度か不意打ちも喰らう。ソ連という国は彼の思い描いた理想とは違う方向に急展開していく。

その当時、シンプルマインドな子供だった私の目から見ると、ドイツ統一とソ連崩壊は、この本でゴルバチョフ氏が全否定する "冷戦での西側の勝利" そのものに見えたのを思い出す。
そして、子どもの私は、てっきりゴルバチョフもそれを望んでいたのかと思っていた。
彼の解放路線は子どもにも分かるくらいに「歴史が動いている」感があったので。

だから、彼がソ連をソ連のまま、単一の連邦国家であることにこだわり、独立国家共同体となることに断固反対な理由が読んでいて正直よく分からなかった。
離脱しようとしている国には多くのロシア人が住んでいる、独立は分断と混乱を招き、社会保障などの制度が壊れ、多くの人に不利益が起こる、などというような理由を挙げていたが、説明にはいろいろと矛盾をはらんでいるように見えた。
どうしても過去の歴史があるだけに、全体主義的な匂いを感じてしまう。
もしかしたら、彼が目指す全体主義はスターリニズムとは全然違うもので、民主主義との真のハイブリッドで、もしかしたら私たちの知らない、一つの美しい理想の姿となりえたのかもしれないけれど・・・。

後半のゴルバチョフの連邦維持への敗残兵的戦いぶりは全然知らなかったので、ちょっと驚く。
特にベロベーシ合意後のベーカー国務長官との会談は蚊帳の外なのが浮き彫りで、読んでいてやや辛いものがあった。

そういう意味では、ベーカーったら、答えに窮するような発言に対して答えるのうまいな、と感心しながら読んだ。相手を傷つけないように逃げるのがうまい。
ベーカーだけじゃなくて、各国首脳たちの受け答えには時々「ほほう」と思った。なんと、あのブッシュ・ジュニアにも・・・。今まで何も知らないくせにバカにしててすみません、って感じだった。みんなダテに政治家のトップじゃないんだなぁ。
私もその機転を見習いたいわ・・・。

解説の方が「外交において首脳間の個人的関係が果たす役割を過小評価してはいけない」と書かれていたが、本当にそうだな、と思った。
おっしゃる通り、私は今まで全く評価してなかった。(安倍ちゃんが、トランプ当選直後にいそいそとアメリカに渡って会ってたのを思い出すが、そこは急ぐところじゃなくね?って思ってた)

しかし、昔語りはさておき、今も続く全人類の共通の問題、核兵器の恐ろしさをこの本は思い出させてくれた。最近は、原子力発電の事故や廃棄問題などの方に気を取られて、兵器のことは忘れてたかも。

この本を読んだ限りでは、核兵器削減への道のりには、どちらかというとアメリカ側に露骨に妨害する勢力があったことがうかがえる(わりとおなじみの方法で)。

ゴルバチョフも本の中でちらっと言及していたけれど、「アイゼンハワーがかつてその影響力について苦々しく語っていた」という軍産複合体のロビーの巨大化について、改めて考えさせられる。アメリカって、いや、世界のあちこちで、経済基盤に軍産複合体がガッチリと組み込まれていってるような。アイゼンハワーの時代からずっと、ますます、かなり強力に。
人々の利害によって支えられているから盤石で怖い。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 自伝・伝記
感想投稿日 : 2020年9月25日
読了日 : 2020年9月25日
本棚登録日 : 2020年9月24日

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