タイトルは「去年の雪」と書いて「こぞのゆき」と読むそうです。
表紙の絵はコラージュを模したものです。
こういう小説は他にあるのかどうか、私は読んだことがありませんでした。
初めて読みました。
百人以上の人の生活の(人生の)断片がずらーっと、切れ切れに並んでいます。
表紙のコラージュと同じです。
最初の方は「あるある、こういうこと」と何度も、ワンシーン、ワンシーンに頷くことが多かったです。
例えば、島森りりかがピアノの練習をして、ストリーボックの”すみれ”を弾いているとピアノの音と降っている雨の音が混じり合って聴こえ、嬉しくなって笑ってしまう場面。私も雨は降っていなかったけれど、ストリーボックの”すみれ”を弾いた時のことを思い出しました。
例えば、双子の姉妹である千奈美が、双子であることが普通で、双子でないというのがどういう感じか、想像するのが難しい。きっと、おそろしくひとりぼっちな、おそろしく淋しい気持ちがするに違いない。と思う場面。
私は双子ではないし、姉妹もいないけれど、この双子の女の子の気持ちは全くそうだろうと思いました。
そして他にも、昔の友人と再会した時の気分とか、なんと不倫をした男性の気持ちまで(私は不倫もしたことがないし、男性でもないけれど)この気持ちは手に取るようにわかると思うことだらけでした。
そして時々、時代が現代ではなくなってしまったり(日本史の素養がないので何時代かはわかりませんが)。だんだんに「あるある」ではなく、「これはないだろう」という絶対経験しない話、犯罪者、死者の話も割合が多くなってきます。
結局、これはどういうお話しなのかは、私にはわかりませんでした。
それに私の「あるある」も私が勝手に思っただけで、江國さんが書いたこととは違うのかもしれません。
でも、私は江國香織さんの小説は、ストーリーよりもそのディティールがとても好きなので、江國さんの描くディティールがたくさん読めて、お腹いっぱい、大満足でした。
- 感想投稿日 : 2020年3月19日
- 読了日 : 2020年3月19日
- 本棚登録日 : 2020年3月11日
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