雲を紡ぐ

著者 :
  • 文藝春秋 (2020年1月23日発売)
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フォロワーの皆さまの、素晴らしい数々のレビューのあとで、稚拙な感想でお恥ずかしいのですが、この本を読んだ本音を書きます。

高校生の山崎美緒は英語教師の母の真紀のことで中傷され学校でいじめに遭います。
都内で電車通学をしていますが、電車の中で毎朝、お腹を下しそうになり、不登校になります。
そして、父の広志の会社はうまくいっていません。

ある日美緒は祖父のいる盛岡行きの新幹線に乗り、祖父の営む山崎工藝舎で、仕事を教えてもらうようになります。
祖父の会社は、ホームスパン、布を紡いで物づくりをしている会社です。
美緒は、東京に帰って高校に戻るか、もしくは転校、それとも職人への道を選ぶか悩みぬきます。

電車の中でお腹を下すほどのいじめに遭うのは身心共につらかったと思います。
私もお腹が弱いけれど、私は学生でも社会人でもないので、生活できますが、人はお腹くらいと言いますが、それでは、電車に乗れないのは当たり前で、高校は卒業できません。

この作品では、母の真紀が美緒に向かって「泣けばすむと思っている。いつも女を武器にして、父や祖父には甘える。そういうところが嫌い」と言って叩く場面がありますが、違う作風の作家さんの作品ならともかく、17歳の娘に向かって、母親が言うことかと思いました。
あとで、祖母が「叩いたお母さんの手の方が痛かったんだよ」とかばっていますが、どんなものかとそこだけは、腑に落ちませんでした。
子供の将来を想って言ったこととは思いますが「女を武器に」は美緒はしていないと思うし、辛辣すぎる暴言ではないかと思いました。

でも、広志が「子供たちには未来があって望めば何にでもなれる」「望んでも得られぬものがあるとわかるのが大人になるってことだよ」と最後に言ったのが、何もせずに大人になってしまった私には響きました。

閑話休題。
私も、高校3年間親の転勤で盛岡市で過ごしたので、懐かしい情景がたくさんありました。
盛岡は東北の「杜の都」と呼ばれます。
私のいた頃は滝沢駅はまだなく、滝沢村で「いわて銀河鉄道」もありませんでした。
でも、福田パンはありました。私はお弁当派だったのですが、年に何度か、パンを買うためにお弁当を持たずに行きました。一番おいしかったのは、やっぱりピーナッツバターのコッペパンです。
開運橋からのぞむ岩手山。
岩手公園の啄木の碑。
懐かしいです。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 小説
感想投稿日 : 2020年10月31日
読了日 : 2020年10月31日
本棚登録日 : 2020年6月28日

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