ひとさらい 笹井宏之第一歌集

著者 :
  • 書肆侃侃房 (2011年1月24日発売)
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感想 : 36
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笹井宏之さんの短歌を知ったのはフォロワーさんのレビューが最初でした。
レビューを拝読してからだいぶ日がたってしまったのは、私の短歌ブームが自分の中できたのが、一昨年の冬からだったせいだと思います。

その後『あの人と短歌』という穂村弘さんの本で再会しました。
そして、この『ひとさらい』。
なんて、瑞々しい作風かと思いました。
そして、ちょっとユーモアもありますね。
多くのフォロワーさんが特別な歌人として、笹井さんのことを位置づけるのもよくわかりました。

この『ひとさらい』は第一歌集。


あとがきより引用
「短歌との出会いがどのようなものであったのか、よく覚えていません。ぼくにとって、文学とは遠い存在なのです。(中略)短歌をかくことで、ぼくは遠い異国を旅し、知らない音楽を聴き、どこにも存在しない風景を眺めることができます。あるときは鳥となり、けものとなり、風や水や、大地そのものとなって、あらゆる事象とことばを交わすことができるのです」
以上あとがきより引用。


夭逝されたのが大変惜しまれます。



特に好きだった歌を以下に。


○ゆっくりと上がっていってかまいません くれない色をして待っています

○ふわふわを、つかんだことのかなしみの あれはおそらくしあわせでした

○風という名前をつけてあげました それから彼を見ないのですが

○コロンボさんのかみさんが亡くなってセリフが減少しています、警部

○拾ったら手紙のようで開いたらあなたのようでもう見れません

○この森で軍手を売って暮らしたい まちがえて図書館を建てたい

○そうごんやりゅうれいなどを強引に巻き付けながらピアニカで愛

○「とてつもないけしごむかすの洪水がくるぞ 愛が消されたらしい」

○「すばらしい天気なものでスウェーデンあたりのひとになってます 父」

○「いま辞書とふかい関係にあるからしばらくそっとしておいて。母」

○にぎりしめる手の、ほそい手の、ああひとがすべて子どもであった日の手の

○晩年のあなたに窓をとりつけて日が暮れるまで磨いていたい

○うしなったことばがひざをまるくして(ことばのひざはまるいんですよ)

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 歌集
感想投稿日 : 2022年7月3日
読了日 : 2022年7月3日
本棚登録日 : 2022年6月11日

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コメント 5件

アールグレイさんのコメント
2022/07/03

こんにちは(^_^)/まことさん

相変わらず、どんな本のレビューもしっかりと、書いていることに脱帽
( ̄^ ̄)ヽ
・・・・まちがえて 図書館を建てたい(クスっと笑ってしまいます)
・・・・けしごむかすの洪水・・・愛が消されると大変ですね
私も、歌集、詩集、読んでみようかな・・・・なんて♪

まことさんのコメント
2022/07/03

アールグレイさん。
いえ、いえ、最近のレビューは、少しごまかして、書いています。
バレてないみたいで、よかった

まことさんのコメント
2022/07/03

アールグレイさん。
投稿が途中で、切れました。
アールグレイさんにも、歌集、詩集は、お薦めです。
アールグレイさんには、天性の、ユーモアが満ちている気がします。
笹井宏之さんの歌集は、図書館にも、たぶん置いてあると、思います。

しずくさんのコメント
2023/04/16

私もこの歌集は持っていますよ! 
○晩年のあなたに窓をとりつけて日が暮れるまで磨いていたい
まったくそんな気持ちにさせる笹井さん、本当に惜しい方を亡くしました。
短歌ブームが来ているのを知っているだけに、尚更踏み出せまさせん(笑)

まことさんのコメント
2023/04/16

しずくさん♪
こちらにコメントありがとうございます。
○ふわふわを、つかんだことのかなしみの あれはおそらくしあわせでした
本当に、素敵な歌を詠まれる笹井さん。
私もこの歌集は買ったので持っています。
私は短歌ブームとは知らず始めたら、短歌ブームと知りました。
まっ、いいかと思いました。

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