笹井宏之さんの短歌を知ったのはフォロワーさんのレビューが最初でした。
レビューを拝読してからだいぶ日がたってしまったのは、私の短歌ブームが自分の中できたのが、一昨年の冬からだったせいだと思います。
その後『あの人と短歌』という穂村弘さんの本で再会しました。
そして、この『ひとさらい』。
なんて、瑞々しい作風かと思いました。
そして、ちょっとユーモアもありますね。
多くのフォロワーさんが特別な歌人として、笹井さんのことを位置づけるのもよくわかりました。
この『ひとさらい』は第一歌集。
あとがきより引用
「短歌との出会いがどのようなものであったのか、よく覚えていません。ぼくにとって、文学とは遠い存在なのです。(中略)短歌をかくことで、ぼくは遠い異国を旅し、知らない音楽を聴き、どこにも存在しない風景を眺めることができます。あるときは鳥となり、けものとなり、風や水や、大地そのものとなって、あらゆる事象とことばを交わすことができるのです」
以上あとがきより引用。
夭逝されたのが大変惜しまれます。
特に好きだった歌を以下に。
○ゆっくりと上がっていってかまいません くれない色をして待っています
○ふわふわを、つかんだことのかなしみの あれはおそらくしあわせでした
○風という名前をつけてあげました それから彼を見ないのですが
○コロンボさんのかみさんが亡くなってセリフが減少しています、警部
○拾ったら手紙のようで開いたらあなたのようでもう見れません
○この森で軍手を売って暮らしたい まちがえて図書館を建てたい
○そうごんやりゅうれいなどを強引に巻き付けながらピアニカで愛
○「とてつもないけしごむかすの洪水がくるぞ 愛が消されたらしい」
○「すばらしい天気なものでスウェーデンあたりのひとになってます 父」
○「いま辞書とふかい関係にあるからしばらくそっとしておいて。母」
○にぎりしめる手の、ほそい手の、ああひとがすべて子どもであった日の手の
○晩年のあなたに窓をとりつけて日が暮れるまで磨いていたい
○うしなったことばがひざをまるくして(ことばのひざはまるいんですよ)
- 感想投稿日 : 2022年7月3日
- 読了日 : 2022年7月3日
- 本棚登録日 : 2022年6月11日
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