まことさんの感想・レビュー

初恋 (現代歌人シリーズ 37)

著者 : 染野太朗

• 書肆侃侃房 (2023年6月26日発売)

歌人の染野太朗さんは、
1977年生まれ。埼玉県に育つ。
歌集に『あの日の海』『人魚』がある。
短歌同人誌「外出」「西瓜」同人。
短歌結社「まひる野」編集委員。


タイトルの『初恋』は私の大好きなアーティスト宇多田ヒカルさんのアルバムのタイトル『初恋』を連想させられ、思わず本棚登録し、ちょっと高価でしたがタイトル買いしてしまいました。

拝読していて、染野太朗さんは絶対宇多田ヒカル好きなんじゃないかと思わされる歌もありましたが、歌集は以外と恋の歌は少なく、地道な生活の匂いがしました。




以下に特に好きだった歌を載せます。



○文庫本二冊携え水買えば旅がはじまる熱海への旅

○小田原でどつと混み合い汗臭き車内となりぬ旅が終はるよ

○しあはせのきみにかかはることができず冬が去る雨の少なかつた冬

○気づいても気づかなくてももう同じきみの嘘はぼくを守つた

○立派なるカメラ提げて若者がつぎからつぎへ撮る音の春

○出会ひなほすといふことのない日々にゐてことばばかりがこころのやうで

○悲しみはひかりのやうに降れをれど会ひたし夏を生きるあなたに

○福岡に引つ越した日のラーメンの旨さを超えるラーメンがない

○なにかに負けてゐるかのやうになにかを嘲笑つてゐるかのやうに夏を過ごした

○ベランダにビーチサンダル洗ひをれば水が夕陽に溶けてやまない

○きみには恋人がゐるといふだけのことをどうしてきみもぼくも花束のやうに

感想投稿日 : 2023年7月13日

読了日 : 2023年7月13日

本棚登録日 : 2023年6月7日