デビュー作「工場」含む三編。具体的に何を作っているのかどのぐらいの規模なのか(かなりデカイ)全くわからない工場に勤めることになった3人の視点から描かれた奇妙な工場の実態と生活。河があり森があり山があり、飲食店だけでも何十店舗と入っていて、クリーニング工場や職員住宅まであり、巨大なヌートリアの死骸が見つかったり正体不明のウがいたり。とにかく謎しかないような工場。この謎と謎を取り巻くシステムそのものが現実社会に喧嘩を売ってるというか上等な皮肉りになっているような作品。心の中の声が鋭く汚い牛山佳子の怒りや疑問は正当なものだ。よくわからないが大卒研究者というだけで何十年も成果を上がらなくても、ともすれば退社するまで何もしなくてもいいような仕事を高待遇でまかされた古笛ののんきな疑問も正当。きっと主人公たち以外も感じていること。誰もがおかしいと思いつつも工場は稼働し続ける。そしてウの正体よ。
他二編も面白かったなー。○○小説という言い方があるけど、職場小説を通り越した生きかた小説みたいな感じ(皮肉だけど現実に即した)。
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
日本文学
- 感想投稿日 : 2015年2月15日
- 読了日 : 2015年2月15日
- 本棚登録日 : 2015年2月15日
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