小さいおうち

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本棚登録 : 3150
レビュー : 669
著者 :
美希さん 日本文学   読み終わった 

14の頃から女中奉公に出たタキの追想記の態で物語は進む。特別華美で裕福というわけではないけれど、品の良い赤い屋根の小さいおうちに住む平井の奥様に遣えるタキ。女優のように美人でおしゃれな時子奥様に惹かれ、生涯ここに遣えたいとまで思うタキ。そんなタキが見た小さいおうちの中の大きな事件、戦局の移り変わりや市井の空気。

合間合間にタキのノートを読んで口を挟んでくる孫がいる。孫は言う。「事変」とかじゃなくてこれは戦争でしょ?そういう言葉でごまかさないで、とかなんとか。
でも戦争という言葉で思い浮かぶ光景はなんとも大雑把に悲惨なものだと思う。きっと当時の市井の人間の感覚だと、事件とか事変とか、そういう言葉が適切だったのだろう。私はそういう細かな言葉の棲み分けをごまかしだとかは思わなけど、そういうタキ世代と孫世代の感覚の違いや年表には乗らない市民生活の息遣いも巧みに描かれている。小さいおうちの、たったひと家族のことを描いているだけなのに、実際に見たことはないけれど、ああこれが当時の東京だったのだろうな、とすんなりと腑に落ちる、そういう穏やかな空気に満たされた小説。

レビュー投稿日
2015年3月7日
読了日
2015年3月7日
本棚登録日
2015年3月7日
6
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