あぁこれはなんと物悲しくて、でも心に残る美しい小説だろう。
『ビニール傘』円環小説。ぐるぐると同じような境遇のひとが入れ替わる感じは面白かった。こんな書きかたあるんやなぁと思う。大阪の写真がいっぱいあって、この場所は近くて遠い。大阪に住んでいても知らない場所ばっかりだ、と思う。通りすがりの人の人生は儚くて、夢の中みたいだ。でも、リアルな感じもある。
『背中の月』はじまりは男がひとりで、妻の美希が出ていったのかと思ったら、亡くなっていることが分かる。主人公の名前はなくて、美希の亡くなったあとも同じマンションにひとりで住んでいる。過去の記憶のなかに戻ることが多い毎日を過ごしている。美希がいなくなったことでひとつも幸福は無くなったのが哀しい。哀しいに決まっている。通勤の環状線の中から見える廃屋についての考察。ここに書かれているとおり、人の住まなくなった家は廃虚になっていく。主人公の住むマンションも台所を使わなくなり、水分がなくなっていく感じがすごく分かる。人はひとりで生きていくこともできると思う。でも、最初から選んだわけではない主人公の哀しみがとても心にすんすんした。最後に大阪から出ていくのか、人生から出ていくのかこの主人公はどこへいくんやろう。
良い本だなぁ。図書館で借りたけど欲しいなと思う。
読書状況:読み終わった
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- 感想投稿日 : 2018年3月14日
- 読了日 : 2018年3月14日
- 本棚登録日 : 2018年3月14日
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